工作機械受注が教えてくれる景況感(24年2月)

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月41,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月138程度で推移するだろう。
  • 日銀は4月にマイナス金利を解除した後、当分の間、金利を据え置くだろう。
  • FEDは6月に利下げを開始、FF金利は年末に4.50%(幅上限)への低下を見込む。
目次

金融市場

  • 前日の米国株は下落。S&P500は▲0.1%、NASDAQは▲0.4%で引け。VIXは15.2へと上昇。
  • 米金利はベア・フラット化。予想インフレ率(10年BEI)は2.277%(▲0.6bp)へと低下。実質金利は1.820%(+3.0bp)へと上昇。長短金利差(2年10年)は▲44.0bpへとマイナス幅拡大。
  • 為替(G10通貨)はUSDが堅調。USD/JPYは147近傍で一進一退。コモディティはWTI原油が77.9㌦(▲0.1㌦)へと低下。銅は8653.0㌦(+73.5㌦)へと上昇。金は2188.6㌦(+3.1㌦)へと上昇。

図表1
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図表2
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図表3
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図表4
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図表5
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注目点

  • 3月11日に発表された2月の工作機械受注統計(日本工作機械工業会)は生産・投資活動の回復に期待を持たせる結果であった。2月の受注額(原数値)は1141億円、前年比伸び率(原数値)は▲8.0%へとマイナス幅縮小。筆者作成の季節調整値は前月比+0.6%、1191億円と小幅ながら増加し、3ヶ月平均値では+0.3%と2ヶ月連続でプラスとなり底打ち感が強まっている。単月の内訳は「国内向け」が季節調整済み前月比+3.0%、原数値前年比▲16.5%と弱さが残存したものの、「外需」は前月比±0.0%、前年比では▲4.1%と持ち直しの動きが続いている。春節と閏年に起因する攪乱はあるものの、総じてみれば回復傾向にあるとみられる。

図表6
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図表7
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図表8
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図表9
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  • 日本の工作機械受注は、そのサイクルがグローバル製造業PMIやアナリストの業績予想(TOPIX予想EPS)と連動性を有する。2月グローバル製造業PMIは50.3へと0.3pt上昇し、16ヶ月連続で50以下の領域で推移した後、2ヶ月連続で50を上回った。ペントアップデマンドの一巡と自動車工場の稼働停止影響で50以下に甘んじている日本をよそに、異例の弱さに直面していた欧州の一部(フランス、イタリア)に持ち直しの兆候が確認された他、米国も改善傾向にあり、中国も50超を維持した。IT関連財の生産集積地である韓国は2ヶ月連続で50超、台湾も50以下の領域ではあるが緩やかな改善傾向にある。今後、中国経済の減速が足かせとなる可能性はあるが、世界的にIT関連財の在庫調整が進展していることから判断すると、世界全体としては2023年対比で改善傾向を辿る可能性が高いと判断される。こうした下で日本企業の業績予想(TOPIX予想EPS)は円安にも支えられ上向きの曲線を描いている。今後、IT関連財の回復期待がより明確化してくればその傾きは急になるだろう。

図表10
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図表11
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図表12
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  • 工作機械受注サイクルの位置取りを確認するために縦軸に受注額の水準(36ヶ月平均からの乖離)、横軸に方向感(6ヶ月前比)をとった循環図をみると、直近は右下局面(低水準・伸び率プラス)を右上方向に進路をとっている。これは受注高が(直近ピーク比)低水準で推移しているものの、底打ちしていることを意味する。過去の経験則に従うなら今後も右方向へ推移した後、徐々に上向きの進路をとると思われる。半導体不足解消に伴う自動車生産の回復およびそれに伴う設備投資の誘発が予想される中、IT関連財の在庫調整が進展するにしたがって半導体向け投資の再開が期待される。今後、米中経済が急失速しない限り「左下」方向へ逆走する展開は想像しにくくなった。株価が既に好転を先取りしている感はあるが、工作機械受注を見る限りにおいて梯子を外されるリスクは和らいでいる。

図表13
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図表14
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図表15
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藤代 宏一


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