ヘイリー氏が地元サウスカロライナ州でも敗北

~トランプ前大統領が共和党予備選を独走~

前田 和馬

要旨
  • 共和党指名候補争いを巡るサウスカロライナ州予備選においては、トランプ前大統領が59.8%の得票率で勝利し、ヘイリー元国連大使は州知事経験のある地元でも敗北する結果となった。
  • 潤沢な選挙資金を有するヘイリー氏は2028年大統領選を見据えて3月5日のスーパーチューズデーまで選挙戦を継続する意向を示しているものの、ここから形勢を逆転する可能性は非常に低い。
  • 今後、11月の米国大統領選に向けた焦点は、3月より開始されるトランプ前大統領の刑事裁判の行方、及び低迷する現職バイデン大統領の支持率へ移っていくことが見込まれる。

2024年米国大統領選挙に向けた共和党指名候補争いのサウスカロライナ州予備選が2月24日に実施され、トランプ前大統領が59.8%の票を獲得し勝利した(開票率99%)。ヘイリー氏は2011-17年に同州の知事を務めたものの得票率は39.5%に留まり、地元での選挙戦でも敗北する結果となった。

南部サウスカロライナ州は黒人人口が26.3%と高い割合を占める一方(全米平均:13.6%)、その大半は民主党支持者とみられており、白人保守層の支持が共和党予備選の鍵を握る。報道各社の出口調査に基づくと、トランプ大統領は幅広い年代からの圧倒的な支持を獲得したほか、黒人有権者に限っても過半数の票を獲得としたとみられる。一方ヘイリー氏は大卒者や中道者層のみに優位性を保つに留まり、事前の世論調査通りサプライズはなかった。

2024年米国大統領選に向けた共和党指名候補争いを巡っては、トランプ氏がこれまで投票が実施された全ての州で勝利する一方、主要対立候補として残るヘイリー氏がここから巻き返す可能性は非常に低い。とはいえ、ヘイリー氏は少なくとも3月5日のスーパーチューズデー(15州において予備選・党員集会)まで選挙戦を継続する意向を示している。同氏が依然撤退を表明しない理由としては、トランプ再選に否定的な大口献金者からの支持を背景に潤沢な選挙資金を有しているほか、2028年大統領選挙を見据え、共和党内での存在感を示し諸州での支持基盤を築く意向があるとみられる。

共和党予備選におけるトランプ氏の勝利はほぼ確実視されており、11月米国大統領選は「バイデン対トランプ」と2020年の再戦となる可能性が高い。このため、今後の焦点はトランプ前大統領が抱える4つの刑事裁判の行方、及び現職バイデン大統領の支持率へと移っていくことが見込まれる。前者に関して、当初3月4日に予定されていた議会襲撃事件の初公判は延期が決定された一方(新たな日程は未定)、不倫口止め料を巡る公判が3月25日から約6週間にわたってニューヨーク地裁で実施される。加えて、5月20日にはフロリダ地裁にて機密文書保持を巡る初公判が予定されており、こうした刑事裁判と選挙戦の同時進行は資金的・時間的な制約をトランプ氏に課すことになるだろう。他方、現職バイデン大統領の支持率はインフレ高止まりや不法移民問題、自身の高齢懸念などを背景に低迷しており、堅調な米国経済という追い風を契機に支持率を再浮上させられるかが注目される。

図表1:共和党候補の支持率(左:全米、右:州別)
図表1:共和党候補の支持率(左:全米、右:州別)

図表2:支持率(バイデンvs.トランプ)
図表2:支持率(バイデンvs.トランプ)

以上

前田 和馬


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前田 和馬

まえだ かずま

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済、世界経済、経済構造分析

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