花粉に負けない日本株

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月38,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月138程度で推移するだろう。
  • 日銀は4月にマイナス金利を解除した後、当分の間、金利を据え置くだろう。
  • FEDは5月に利下げを開始、FF金利は年末に4.50%(幅上限)への低下を見込む。
目次

金融市場

  • 前日の米国株は上昇。S&P500は+0.8%、NASDAQは+0.9%で引け。VIXは12.8へと低下。
  • 米金利はカーブ全般で金利上昇。予想インフレ率(10年BEI)は2.234%(▲0.2bp)へと低下。 実質金利は1.885%(+2.3bp)へと上昇。長短金利差(2年10年)は▲31.0bpへとマイナス幅拡大。
  • 為替(G10通貨)はUSD高基調。USD/JPYは148前半へと上昇。コモディティはWTI原油が73.9㌦(+0.5㌦)へと上昇。銅は8312.0㌦(▲90.0㌦)へと低下。金は2035.2㌦(+0.7㌦)へと上昇。

米国 イールドカーブ、名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)、長短金利差(2年10年)
米国 イールドカーブ、名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)、長短金利差(2年10年)

(%) 米国 イールドカーブ
(%) 米国 イールドカーブ

(bp) 米国 イールドカーブ(前日差)
(bp) 米国 イールドカーブ(前日差)

米国 名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)
米国 名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)

米国 長短金利差(2年10年)
米国 長短金利差(2年10年)

注目点

  • 2022・23年は4~6月にかけて日本株の強さが目立った。2022年春について、日本株の指数水準そのものは概ね横ばいで、一見すると強く見えない。しかしながら、同時期に米国株が急落していたことを踏まえれば、その相対的な強さは目を見張るものがあった。そして2023年はPBR1倍割れの解消が焦点となる中、決算発表を契機に株高が進行した。仮に今年も去年と同じ現象が再現されるなら、日経平均の最高値更新が視野に入る。

日米 株価指数
日米 株価指数

  • 日本株が春に強かった一因に自社株買いがあろう。そこで2005年以降の自社株買い枠が設定された件数・金額を月別に集計し季節性を確認すると、どちらも5月の多さが見て取れる。ここからは3月決算企業が本決算において株主還元策(自社株買い・増配)を発表する慣行が窺える。金額でみれば5月は圧倒的であり、特に2022・23年は3兆円を超える自社株買いが発表された。現在の企業業績を踏まえると、今年も高水準の自社株買い発表が期待でき、年間10兆円ペースから一段と加速する可能性もある。仮に5月単月で3兆円を上回る自社株買いが発表されるならば、それは投資家の要求を満たす可能性が高い(※そう考えると日銀のETF買い入れ6兆円は大きかった)。

月別 自社株買い枠設定(件数)、月別 自社株買い枠設定(金額)
月別 自社株買い枠設定(件数)、月別 自社株買い枠設定(金額)

月別 自社株買い枠設定(件数)
月別 自社株買い枠設定(件数)

月別 自社株買い枠設定(金額)
月別 自社株買い枠設定(金額)

日本 自社株買枠設定額
日本 自社株買枠設定額

  • また今年ならではの話題として5月に名目GDP600兆円達成が明らかになる可能性に期待したい。2023年10-12月期に達成したかは微妙なところだが、日本経済が1-3月期にプラス成長を遂げるなら5月に発表されるGDP統計で名目GDPの600兆円達成が明らかになる可能性は高い。名目GDPと一株当たり利益が長期的に連動することを踏まえれば、投資家が1~3%の名目GDP成長率を前提に、10%弱の中長期的なEPS成長率に自信を深めると予想される。名目GDPの600兆円達成は、日本経済がもはやデフレでないことを象徴し、株式市場への資金流入を促すだろう。

  • 上記も踏まえ、日経平均の先行き12ヶ月見通しを38,000に上方修正する。景気認識や金融政策の見通しに非連続的な変化は生じていないが、企業業績拡大の確度が増したと判断した。

日本 名目GDP EPS(TOPIX)
日本 名目GDP EPS(TOPIX)

藤代 宏一


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