2024年1月FOMCプレビュー

~パウエル議長は引き続き「データ次第」の姿勢を示す見込み~

前田 和馬

要旨
  • 1月FOMC(1/30-31開催)では4会合連続で政策金利が据え置かれる見通しだ。FRBは現行の高金利政策を維持しつつ、インフレ鎮静化の進展を注視する姿勢を引き続き示すとみられる。
  • パウエル議長は今後の金融政策が「データ次第」である姿勢を堅持する可能性が高い。一方、足下のFRB高官発言と同様、市場の早期利下げ観測をけん制する場合にはタカ派的メッセージと捉えられるだろう。
  • 量的引き締め(QT)の減速を巡っては、1月FOMCで具体的な方針が示される可能性は低いものの、パウエル議長がこれに関する具体的な議論を開始したことに言及するのかが注目される。

1月FOMCは現状維持が大勢見通し

1月FOMC(1/30-31開催)では4会合連続で政策金利の現状維持が決定される見通しだ。1/23時点のCMEのFedWatch(FF金利先物)に基づくと、市場による政策金利(現行:5.25~5.50%)の据え置き予想が98.4に達しており、25bpsの利下げを見込むのは1.6%に留まる(図表1)。FRBは現行の高金利政策を維持しつつ、インフレ鎮静化の進展を注視する姿勢を引き続き示すとみられる。

足下の経済指標は強弱入り混じる内容となっている。12月雇用統計における非農業部門雇用者数は3か月移動平均が+16.5万人(11月:+18.0万人)と、節目となる+20万人を3か月連続で下回るなど雇用拡大ペースの減速が鮮明となったほか、12月ISMは製造業・サービス業共に軟調に推移した。他方12月小売売上高は前月比+0.6%(11月:+0.3%)と好調な年末商戦を背景に2か月連続で増加するなど、個人消費は堅調に推移している。直近1/19時点のアトランタ連銀によるGDPナウキャストは10-12月期実質GDPが前期比年率+2.4%(7-9月期:+4.9%)と、前期から減速するものの底堅く推移した見通しだ。この間12月CPIは前月比+0.3%(11月:+0.1%)と市場予想(+0.2%)を僅かながら上回った一方、1/26公表の12月PCEデフレーターは市場予想が前月比+0.2%(11月:-0.1%)と再び上昇へと転じる見込みであり、2%インフレ目標達成に向けた「ラストマイル」の不透明感は依然残る。

パウエル議長は「データ次第」を堅持する見込み

2023年12月FOMC(12/12-13開催)後の記者会見において、パウエル議長は「(利下げの時期を)今回の会合で議論した」と言及した一方、翌々日の12/15にはNY連銀のウィリアムズ総裁が「現時点で利下げに関して実際に議論していない」とこれを否定するような発言をした。足下のFRB高官発言も3月の利下げ開始は「時期尚早」との言及が目立っており、FF金利先物による3月FOMCの利下げ確率は49.8%まで後退している。とはいえ、2024年の利下げ幅を巡っては金融市場(FF金利先物)が150bps、FOMCメンバー(中央値)が75bpsの利下げをそれぞれ見込むなど、両者の見解の相違は依然解消されるに至っていない。

声明文、及び会合後のパウエル議長の記者会見では早期の利下げを示唆する内容は見られない可能性が高い。パウエル議長は今後の金融政策が「データ次第」であるとのスタンスを維持し、追加利上げや早期利下げの選択肢を排除しないことを示すと見込まれる。一方、足下のFRB高官発言と同様にパウエル議長が市場の早期利下げ観測をけん制する場合にはタカ派的なメッセージ、インフレ減速への自信をほのめかす、或いは利下げのタイミングや条件の具体的内容を示すことで早期利下げが現実味を帯びる場合にはハト派的なメッセージとして市場に捉えられる可能性がある。

バランスシート政策への言及

1/6、ダラス連銀のローガン総裁は既存の量的引き締め(QT;国債保有額を月額最大600億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)・政府機関債を月額最大350億ドル削減)が短期金融市場の混乱を招く可能性を指摘したうえで、「バランスシート縮小のペースを検討するべき」と述べた。12月FOMC議事要旨においても、複数(Several)の参加者がQT減速を決定する「かなり前」にそうした議論を開始することが適切であると主張している。

一方、パウエル議長は12月FOMC後の記者会見で「QTのペース変更に関しては議論していない」と述べた。1月FOMC後の記者会見において、パウエル議長がこうした発言を修正し、QTに関する具体的な議論を同会合にて開始したことを示唆するのかが注目される。なお、NY連銀のウィリアムズ総裁は1/10に「(QT減速や停止を決定する段階に)近づいていない」と指摘しており、1月FOMCでQT修正に関する具体的な方針が示される可能性は低い。ちなみに、NY連銀が実施する12月のプライマリーディーラー調査(11/29-12/4実施)においては、市場参加者の予想するQT終了時期が2024年10-12月期と、10-11月調査(10/18-23実施)の24年7-9月期から後ずれしている。

図表1,2
図表1,2

図表1
図表1

図表2
図表2

図表3上
図表3上

図表3下
図表3下

以上

前田 和馬


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前田 和馬

まえだ かずま

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済、世界経済、経済構造分析

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