アイオワ州党員集会は想定内のトランプ圧勝

~トランプ氏の支持基盤は盤石~

前田 和馬

要旨
  • 11月の米国大統領選に向けた共和党指名候補争いの初戦であるアイオワ州党員集会では、トランプ前大統領が過半数の票を獲得するなど、事前の想定通り圧倒的な勝利を収めた。
  • アイオワ州党員集会の結果を受け、4位に留まったラマスワミ氏、得票率が1%未満となったハッチンソン氏は指名候補争いからの撤退を表明した。今後、ラマスワミ氏の支持層はその大半がトランプ氏の支持に流れるとみられる。
  • 次戦となるニューハンプシャー州予備選においてもトランプ氏が圧倒的支持を保っており、共和党指名争いの最有力候補である構図に変化はない。

2024年米国大統領選挙における共和党指名候補争いの初戦となるアイオワ州党員集会では、トランプ前大統領が51.0%の票を獲得するなど、事前の世論調査通り圧倒的な勝利を収めた(開票率99%)。デサンティス・フロリダ州知事は21.2%を獲得し2位につけた一方、対トランプ候補として足下で躍進していたヘイリー元米国連大使は19.1%で3位に留まった。なお、同州を襲った記録的な寒波を背景に投票者数は11万人と、過去最高を記録した2016年の18.7万人を大きく下回ったものの、選挙の大勢を変えうる影響はなかったとみられる。

属性別の投票行動を見ると、トランプ氏が性別・年齢・人種を問わずに圧倒的な支持を獲得している(図表1)。アイオワ州の人種構成は白人が83.7%を占めるなど全米平均(58.9%)を大きく上回るものの、こうした幅広い属性からの支持はトランプ氏が人種構成の異なる州でも勝利する可能性を強く示唆している。なお、トランプ氏は白人大卒者層に関しては支持が落ちたものの、それでもデサンティス氏とヘイリー氏の支持を上回りトップを維持した。

アイオワ州党員集会の結果を受け、得票率7.7%で4位に留まったラマスワミ氏、得票率が1%未満となったハッチンソン氏は指名候補争いからの撤退を表明した。ラマスワミ氏はこれまで「トランプ氏は21世紀最高の大統領」と述べるなどトランプ氏と近い政策スタンスを示しているため、その支持層の大半はトランプ氏の支持に流れるとみられる。

次戦となるニューハンプシャー州予備選は1/23に実施される。現時点の世論調査では同州においてもトランプ氏が圧倒的な支持を保っており、共和党指名争いの最有力候補である構図に変化はない(図表2)。一方、2番手につけるヘイリー氏にとっては同州のスヌヌ知事の支持、及びトランプ批判を展開したクリスティー前ニュージャージー州知事の予備選撤退が追い風になると見込まれるため、ヘイリー氏がどれだけ躍進するかが注目される。

図表1:共和党アイオワ州党員集会における属性別の投票行動
図表1:共和党アイオワ州党員集会における属性別の投票行動

図表2:共和党候補の支持率(左:全米、右:予備選初戦となる2州)
図表2:共和党候補の支持率(左:全米、右:予備選初戦となる2州)

以上

前田 和馬


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前田 和馬

まえだ かずま

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済、世界経済、経済構造分析

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