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2023.12.11
日本経済
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岸田政権
景気予測調査から見た23年度決算見通し
~注目は「電気・ガス・水道」「宿泊・飲食サービス」「石油・石炭製品」「自動車」~
永濱 利廣
- 要旨
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- 2023年10-12月期の法人企業景気予測調査を見ると、23年度は売上高が下方修正される一方、経常利益計画が上方修正となり、特に非製造業では減益計画から増益計画に上方修正。
- 増収計画の上方修正率が高い業種は「非鉄金属」「自動車・同付属品」「石油・石炭製品」「その他サービス」「宿泊・飲食サービス」と続く。人材派遣が含まれる「その他サービス」や「宿泊飲食サービス」は、コロナからのリオープンやインバウンド消費の拡大等により、移動や接触を伴うビジネスで値上げが進んでいることが寄与している可能性が推察される。「非鉄金属」や「石油・石炭製品」は、想定以上の円安や原油高進展などで原材料や仕入れ価格の水準がさらに引きあがったことに伴う価格転嫁が寄与している可能性。
- 経常利益計画が大幅上方修正された業種は「電気・ガス・水道」「宿泊・飲食サービス」「石油・石炭製品」「自動車・同付属品」「鉱、採石、砂利採取」の順となる。特に「自動車・同付属品」は、典型的な輸出関連業種で売り上げも上方修正されているため、当初の想定以上に円安が進展したことが経常利益の押し上げに寄与していることに加え、半導体供給の改善等に伴う生産や販売の拡大も寄与している可能性が推察される。
- 一方、「石油・石炭製品」では、夏場にかけての原油高に伴う在庫評価益の拡大効果や政府の物価高対策の延長等も寄与しているものと思われる。また「電気・ガス・水道」も大幅増益計画に上方修正されている。ここにも政府の物価高対策延長の効果が含まれることに加え、燃料費調整制度に伴う損益改善や電気料金値上げ、原発再稼働による燃料費削減効果が寄与している可能性が推察される。
- 想定為替レートの修正度合いがわかる12月日銀短観の業種別収益計画(12月13日公表)も今期業績見通しを読み解く手がかりとして注目したい。
売上高・経常利益とも計画上方修正
12月11日に公表された2023年10-12月期法人企業景気予測調査は、今年11月下旬にかけて資本金1千万円以上の法人企業に対して行った景気予測調査であり、今期の業種別企業業績計画を予想するための先行指標として注目される。
そこで本稿では、来年1月下旬からの四半期決算発表で、今年度の企業業績計画の上方修正が見込まれる業種を予想してみたい。
下図は、法人企業景気予測調査の調査対象企業の各調査時期における売上高と経常利益計画の今年度見通しの前回からの修正度合いを見たものである。まず売上高を見ると、製造業・非製造業とも増収率が下方修正となっている。
一方の経常利益は、製造業・非製造業とも上方修正となっているが、予想以上のインバウンド消費の拡大などもあってか、非製造業は増益計画に修正されている。このことから、1月下旬からの四半期決算発表では、非製造業を中心に今年度利益計画の上方修正が期待される。
「非鉄金属」「自動車」「石油・石炭製品」で増収率上方修正
以下では、1月下旬からの四半期決算で、今期売上高計画で上方修正が予想される業種を見通してみたい。下表は業種別売上高計画を前年比と前回調査からの修正率で比較したものである。
結果を見ると、23年度は多くの業種で増収計画となっている姿は前回と変わっていない。こうした中で、前年比の上方修正率が高い業種は「金属製品」「自動車・同付属品」「石油・石炭製品」「その他サービス」「宿泊・飲食サービス」であり、特に「自動車」と「宿泊・飲食サービス」では2桁の増収計画となっている。
「自動車・同付属品」については、部品不足の解消で大幅な増産が可能になっていることに加えて、円安や値上げも追い風となっていることが推察される。また「宿泊・飲食サービス」や人材派遣業のウェイトが大きい「その他サービス」については、コロナからのリオープン効果と相まって値上げ等が進んでおり、移動や接触を伴う経済活動が正常化に向かう動きが進展している可能性が推察される。
一方、「非鉄金属」や「石油・石炭製品」については、夏場にかけて想定以上の円安・原油高が進展したこと等に伴い、化石燃料や仕入れ価格の水準がさらに引きあがったことによる価格転嫁の影響が大きいことが推察される。
「電気・ガス・水道」「宿泊・飲食」「石油・石炭製品」等が増益率大幅上方修正
続いて、経常利益計画から増益率の上方修正が期待される業種を見通してみよう。結果を見ると、多くの業種で減益計画となっており、これは円安や人件費高等に伴うコスト増が主因と推察される。こうした中、増益率の上方修正が目立つ業種は「電気・ガス・水道」「宿泊・飲食サービス」「石油・石炭製品」「自動車・同付属品」「鉱・採石・砂利採取」等であり、いずれも二桁を大きく上回る上方修正率となっている。
中でも「自動車・同不足品」については、代表的な輸出関連業種である。このため、この3か月間で想定以上に円安が進んだことで利益が上振れしたことに加えて、想定為替レートが円安方向に修正された可能性も推察される。
一方、「石油・石炭製品」では、夏場にかけての原油高に伴う在庫評価益の拡大効果や政府の物価高対策の延長等も寄与しているものと思われる。また「電気・ガス・水道」も大幅増益計画に上方修正されている。ここにも政府の物価高対策延長の効果が含まれることに加え、燃料費調整制度に伴う損益改善や電気料金値上げ、原発再稼働による燃料費削減効果が寄与している可能性が推察される。
他方、「宿泊・飲食サービス」も大幅増益計画に上方修正されている。こちらは売上高も大幅に上方修正されているため、コロナからのリオープンやインバウンド消費拡大が期待されていること等により、移動や接触を伴う経済活動に関連するサービスの増加が寄与している可能性が推察される。
なお、日銀が12月13日に公表する12月短観の業種別収益計画(大企業)は法人企業景気予測調査に比べて聞き取りのタイミングが若干遅いことから、円安や観光支援策・水際対策緩和などの影響をより織り込んでいる可能性が高いため、12月短観における大企業の収益計画も四半期決算と今期業績見通しを読み解く手がかりとして注目したい。
永濱 利廣
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 永濱 利廣
ながはま としひろ
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経済調査部 首席エコノミスト
担当: 内外経済市場長期予測、経済統計、マクロ経済分析
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