2023年12月FOMCプレビュー

~ドットチャートが示す2024年の利下げ回数に注目~

前田 和馬

要旨
  • 12月FOMC(12/12-13開催)では3会合連続で政策金利が据え置かれる見通しだ。10月の経済指標は景気とインフレの減速を示唆しており、大半のFRB高官は追加利上げの必要性を主張していない。
  • 金融市場が利上げの打ち止め、2024年における5回の利下げ(125bp)を織り込むなか、会合後に公表されるFOMCメンバーの経済見通し(SEP)における2024年の利下げ回数が注目される。
  • 2024年のFOMC投票メンバーにおける政策スタンスの構成は、2023年から大きく変化しないと見込まれる一方、2024年6月にタカ派とみられるメスター氏が退任することには留意が必要である。

12月FOMCは現状維持が大勢見通し

12月FOMC(12/12-13開催)では、3会合連続で政策金利の現状維持が決定される見通しだ。12/5時点のCMEのFedWatch(FF金利先物)に基づくと、市場による政策金利(現行:5.25~5.50%)の据え置き予想が97.5%に達しており、+25bpsの利上げを見込むのは2.5%に留まる(図表1)。

10月の経済指標は総じて景気とインフレの減速を示唆する内容だった。10月雇用統計における非農業部門雇用者数は前月差+15.0万人(9月:+29.7万人)、3か月移動平均では+20.4万人(+23.3万人)と、ストライキによる自動車労働者の減少による影響はあるものの、雇用増加ペースが鈍化した。一方、10月のコアPCEデフレーター(食品・エネルギーを除くベース)は前年比+3.5%(9月:+3.7%)と3か月連続で騰勢を鈍化するなど、依然高水準ながらインフレ減速が続いている。

この間、11/17までの情報を基にした地区連銀経済報告では、半分以上の地区で経済活動が小幅に減少したほか、今後6~12か月の経済見通しも悪化したと指摘された。また、タカ派とみられたウォラー理事が数か月以内の利下げの可能性に言及するなど、追加利上げを主張するFRB高官の発言は限定的に留まる(文末の図表5参照)。

なお、12月FOMC(12/12-13開催)の政策決定までに、11月雇用統計(12/8)と11月消費者物価指数(12/12)が公表される。11月の非農業部門雇用者数は前月差+18.0万人が市場予想であり、ストライキ収束による多少の上振れがある場合においても、12月FOMCにおける大勢見通しを変える可能性は低いだろう。一方、雇用の再加速が示され、11月CPIにおいてインフレ減速ペースにも一服感が示される場合、2024年における市場の利下げ織り込みは幾分剥落する可能性が高い。

ドットチャート:2024年の利下げ回数に注目

会合後に公表されるFOMCメンバーによる経済見通し(SEP)では、2024年の利下げ回数が注目される。直近9月時点のドットチャートでは、FOMCメンバーによる2024年末の政策金利見通し(中央値)が5.00~5.25%と、現行水準である5.25~5.50%より25bps低い(図表2)。一方FF金利先物に基づく2024年末の政策金利(中央値)は4.00~4.25%と、市場は現行水準から5回の利下げ(125bp)を予想しており、こうした両者の乖離がどの程度縮小するのかが注目される。

とはいえ、足下のFRB高官発言は市場による早期の利下げ観測をけん制しており、ドットチャートが市場見通しと整合的な水準まで切り下がるかは不透明であろう。12/2、パウエル議長は政策金利が適切な水準にないリスク(高すぎるor低すぎる)が均衡していると指摘したうえで、「(利下げのタイミングを)憶測するのは時期尚早」と強調した。また11/30、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁が利下げの判断は景気とインフレの動向に依存すると指摘した一方、サンフランシスコ連銀のデイリー総裁は「現時点において利下げは全く考えていない」と高金利を当面維持する考えを示している。

2024年のFOMC投票メンバーの政策スタンスは当面大きく変化なし

FOMC投票メンバーは、常任のFRB議長・副議長・理事の7名、及びニューヨーク連銀総裁に加えて、輪番制で1年ごとに入れ替わる4名の地区連銀総裁によって構成される。地区連銀4名の投票メンバーの構成は、2023年がハト派1名(ハーカー氏)・中立1名(グールズビー氏)・タカ派2名(カシュカリ氏とローガン氏)となる一方、2024年もハト派がボスティック氏、中立がデイリー氏、タカ派がメスター氏とバーキン氏の2名と、メンバーの政策スタンス構成に大きな変化はないと考えられる(図表4)。ただし、クリーブランド連銀総裁は2024年の投票メンバーであるものの、タカ派とみられる現職のメスター氏は2024年6月に退任予定のため、後任次第では年後半以降のFOMC投票メンバーのバランスに変化が生じる可能性がある。

図表1、図表2
図表1、図表2

図表3、図表4
図表3、図表4

図表5 FRB高官発言
図表5 FRB高官発言

以上

前田 和馬


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前田 和馬

まえだ かずま

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済、世界経済、経済構造分析

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