ニュージーランド:金融政策(23年11月)

~市場予想通りの据え置きなるも、内容は予想以上にタカ派で再利上げの可能性が高まる~

阿原 健一郎

要旨
  • 11月29日、RBNZは政策金利の据え置き(5.50%)を決定。据え置きは市場予想通り。据え置きは4会合連続。
  • 据え置きの背景は、インフレ率がインフレターゲットの範囲に戻るためには、長期間金利を抑制的な水準に維持する必要がある、としている。先行きは、インフレ圧力が予想よりも強ければ、政策金利のさらなる引き上げが必要になる可能性が高い、と再利上げを示唆した。
  • NZドルはタカ派的なスタンスを受けて、対米ドル、対円いずれも増価。

11月29日、ニュージーランド準備銀行(RBNZ)は政策金利(オフィシャルキャッシュレート)の据え置き(5.50%)を決定した。据え置きは市場予想通り(据え置き:28/28人、ロイター調査)。据え置きは4会合連続(図表1)。

【図表1】政策金利とインフレ率の推移
【図表1】政策金利とインフレ率の推移

据え置きの背景について、RBNZは「インフレ率がインフレターゲットの範囲に戻り、最大限の持続可能な雇用を支えるためには、長期間金利を抑制的な水準に維持する必要がある」とし、引き続き、既往の金融引き締めの効果を見守る形を取った。ただ、今回据え置きを継続したものの、前回会合からは、インフレの上昇圧力に対する懸念が増している様子が窺える。特に、今回指摘されていたのは、移民による人口増加である。移民が想定を上回り増加していることで、労働市場の需給は緩和されたものの、今後は住宅価格や賃料等の上昇を通じてインフレに上昇圧力がかかる可能性がある、としている。もっとも、議事要旨を確認すると、足もとまでの住宅価格の低下や労働市場の軟化により家計の消費意欲は引き続き低下する、とみる委員もおり、政策委員の間でもインフレリスクに対する評価は割れているようである。

先行きについては、「現在の政策金利の水準が需要を制限していると確信している」としつつも、継続的な超過需要とインフレ圧力が懸念されており、「インフレ圧力が予想よりも強ければ、政策金利のさらなる引き上げが必要になる可能性が高い」と、再利上げが必要になる可能性を示唆した。また、今回公表された政策金利の見通しでは、現行の金利水準をさらに長期間維持する見通しに修正された(図表2)。据え置き期間の長期化に加え、利上げの議論が再浮上してきたことから、前回会合対比では、かなりタカ派的なスタンスに傾いたといえる。今後、賃料や住宅価格の上昇が確認され、インフレ率がRBNZの見通しを上振れるようであれば、再度利上げに踏み切る可能性が高いと考えられる。

なお、今回は市場予想通りの据え置きだったものの、タカ派的な内容と先行きの利上げが意識され、NZドルは一時、米ドルに対し+0.7%増価し、日本円に対し+0.8%増価した(図表3、4)。

【図表2】RBNZの政策金利見通しの変化
【図表2】RBNZの政策金利見通しの変化

【図表3】為替レート(対米ドル、11/30日)
【図表3】為替レート(対米ドル、11/30日)

【図表4】為替レート(対日本円、11/30日)
【図表4】為替レート(対日本円、11/30日)

図表2,図表3、図表4
図表2,図表3、図表4

阿原 健一郎


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阿原 健一郎

あはら けんいちろう

経済調査部 主任エコノミスト
担当: アジアパシフィック経済、世界経済

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