2023・2024年度日本経済見通し(2023年11月)(2023年7-9月期GDP1次速報後改定)

新家 義貴

最新の見通しは、2023~2025年度日本経済見通し(2024年2月)(2023年10-12月期GDP1次速報後改定)をご覧下さい。

要旨

日本・国内総生産(GDP)成長率予測値
日本・国内総生産(GDP)成長率予測値

  • 実質GDP成長率の見通しは、23年度が+1.3%(23年9月時点予測:+1.7%)、24年度が+0.7%(同+1.0%)である。暦年では2023年が+1.6%(同+1.8%)、2024年が+0.6%(同+1.0%)となる。23年7-9月期の実質GDP成長率が前回予測時点での見通しを大幅に下振れたことに加え、内需の足取りが想定以上に鈍いことを反映したことで、23年度、24年度とも成長率見通しを下方修正した。

  • 23年7-9月期の実質GDPは前期比年率▲2.1%と3四半期ぶりのマイナス成長となった。均してみれば景気は引き続き回復傾向にあるが、回復ペースは緩やかなものにとどまっており、足取りは鈍い。特に懸念されるのが内需の弱さであり、個人消費、設備投資とも2四半期連続で減少している。コロナ禍からの経済活動正常化の動きが加速することから内需主導の景気回復が実現するとの見方も多かっただけに、足元における内需のもたつきは期待外れだ。賃金が増加している一方で物価がそれ以上に上昇し、家計の購買力を削いでいることに加え、コロナ禍からのリバウンドの動きも一巡しつつあることが影響しているとみられる。

  • 先行きについても、景気の回復ペースは緩やかなものにとどまると予想している。米国景気は足元で依然堅調に推移しており、先行きもリセッションに陥る可能性は低いが、過去の利上げの累積的な悪影響がタイムラグをもって顕在化することを考えると、方向としては減速とみるのが妥当だろう。学生ローンの返済再開やクレジットカード金利の上昇、超過貯蓄の減少といった下押し要因もあり、先行きについてはこれまでのような景気の強さは見込み難い。また、欧州経済は足元で悪化が目立つことに加え、中国経済も足元でようやく下げ止まりが見えてきた段階にとどまり、先行き多くは望めない。輸出が景気の牽引役となることは難しい。

  • 個人消費も緩やかな増加にとどまると予想する。経済活動正常化の流れは変わっておらず、出遅れていたサービス消費を中心に回復を続ける可能性が高い。もっとも、4-6月期、7-9月期の足踏みに象徴されるように、個人消費の増勢には足元で陰りが見える。個人消費はこれまで、コロナ禍で水準を大きく落としたところからの正常化の力が働いていたことで回復してきたが、消費水準がある程度戻ってきたことで、こうした押し上げ効果が弱まりつつある可能性がある。個人消費の水準は、実質でもコロナ前に近付き、名目でははっきり上回っている。物価上昇が続くなか、今後は貯蓄を取り崩す段階に入ってくるが、貯蓄の取り崩しが順調に進むことは考えにくい。先行きの消費は緩やかな増加にとどまるだろう。

  • このように、先行き輸出が伸び悩むなか、内需も冴えない動きとなることで、景気は牽引役不在の状況が続くと予想される。今後も景気は回復基調で推移するとみられるが、力強さに欠ける展開が続くだろう。

  • 24年度には、在庫調整の終了により世界的な製造業の調整局面は一巡することが予想される。日本からの財輸出への下押し圧力も和らぐだろう。もっとも、金融引き締め効果の顕在化から海外経済の減速が予想されるなか、需要面からの押し上げは見込めず、輸出の回復力は脆弱なものにとどまるだろう。また、個人消費についても回復力が強まる可能性は低い。24年春闘では、23年並みの高い賃上げが実現する可能性が高いと予想しているが、実質賃金でみると24年度平均でゼロ%近傍にとどまる見込みである。コロナ禍で抑制された水準からのペントアップ需要が弱まることもあり、24年度についても消費の伸びは緩やかなものにとどまると予想する。24年度についても内外需とも力強さに欠けるだろう。景気の回復感が強まるには、世界経済の持ち直しが予想される25年度を待つ必要がある。

  • 消費者物価指数(生鮮食品除く総合)の見通しは、2023年度が前年度比+2.9%(前回見通し時点:+2.7%)、24年度が+2.0%(同+1.5%)である。24年度について、企業による価格引き上げ意欲が想定以上に強いことと、電気・ガス代の負担軽減策の一段の縮小を想定したことから、24年度の見通しを上方修正した。輸入物価が下落しコスト上昇圧力が弱まりつつあることや、前年のCPIの上昇ペースが非常に速かった裏が出ていることから、CPIコアは足元で鈍化方向にある。もっとも、企業の価格引き上げ姿勢が強いことを踏まえると、鈍化ペースは緩やかなものにとどまるとみられ、23年末でも前年比+2%台で推移する可能性が高い。24年度については、サービス価格の上昇が予想されることに加え、電気・ガス代の負担軽減策の影響が剥落することが押し上げ要因になる一方、コスト上昇圧力の一服から食料品等でも鈍化が鮮明となることで、CPIコアも上昇率が縮小すると予想する。24年度後半には+2%を割り込み、その後も2%を下回って推移するだろう。

日本経済予測総括表
日本経済予測総括表

図表 実質GDPの見通し(四半期別推移)
図表 実質GDPの見通し(四半期別推移)

実質GDP成長率の予測(前期比年率、寄与度)
実質GDP成長率の予測(前期比年率、寄与度)

新家 義貴


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

新家 義貴

しんけ よしき

経済調査部・シニアエグゼクティブエコノミスト
担当: 日本経済短期予測

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