共和党指名候補者による第3回討論会レビュー

~ヘイリー氏が討論会及び世論調査で躍進~

前田 和馬

要旨
  • 2024年大統領選の共和党指名候補者が参加する第3回討論会では、世論調査で躍進するヘイリー氏に他候補者からの攻撃が集中したものの、同氏はこれにうまく対処し、存在感を発揮した。
  • とはいえ、トランプ氏が大統領指名候補として支持率で圧倒的にリードする構図に変化はない。
  • 第4回討論会は12/6にアラバマ州で開催される。候補者指名争いの初戦であるアイオワ州の党員集会が1/15に迫るなか、今後は候補者の絞り込みがより一層加速する見通しだ。デサンティス氏の支持率が低迷する一方、ヘイリー氏が対トランプ候補としての地位を確立しつつある。

11月8日、2024年大統領選の共和党指名候補者が参加する第3回討論会がフロリダ州マイアミにて開催された(注1)。同討論会に参加したのは、各種世論調査で依然2番手につけるデサンティス現フロリダ州知事(図表1)、ヘイリー元米国連大使、30代起業家のラマスワミ氏、サウスカロナイナ州選出のスコット上院議員、トランプ氏に批判的なクリスティー前ニュージャージー州知事の5名である。なお、第2回討論会に参加したペンス前副大統領は支持率低迷を背景に10月末に候補者指名争いからの撤退を表明している。また、バーガム現ノースダコタ州知事は第3回討論会への参加要件を満たさなかった。他方支持率で圧倒的に優位に立つトランプ前大統領は、第1・2回の討論会に引き続き今回も欠席した。

同討論会においては、各種世論調査で躍進するヘイリー氏に各候補者からの攻撃が集中した。デサンティス氏がヘイリー氏を「(サウスカロライナ州知事時代に)米軍基地近くの土地を中国企業に与え、中国大使にラブレターを書いた」と批判したほか、ラマスワミ氏は自身を「米国第一主義のリーダー」と評し、イスラエルやウクライナへの関与姿勢をみせるヘイリー氏の外交政策を批判した。一方同討論会の評価を巡っては、ヘイリー氏がこうした攻撃にうまく対処し、最も良いパフォーマンスを発揮したとの見方が多い(注2)。

同討論会の具体的な政策討論は、イスラエル軍とハマスの戦闘が激化するガザ情勢、及びウクライナ支援を巡る外交問題に集中した。ヘイリー氏はイスラエルのネタニヤフ首相の支持を表明したほか、ロシアと中国は米国の支援が弱まることを「待ち望んでいる」とし、ウクライナ支援の必要性も強調した。また、デサンティス氏はハマスせん滅を目指すイスラエルを支持する一方、ウクライナ支援の規模に関しては疑問を呈した。他方ラマスワミ氏はウクライナを「民主主義国家の模範ではない」と指摘したことに加えて、イスラエル支援を巡っても米国の南部国境対策に集中する姿勢を示すなど、外交政策で他候補と一線を画した。

次回討論会は12/6にアラバマ州で開催される。なお、第4回討論会の参加には世論調査における6%以上の支持、及び8万件以上の寄付などの各種要件を満たす必要があり、今回不参加となったバーガム氏、及びこれまで芳しいパフォーマンスを示せていないスコット氏は同討論会に参加できない可能性がある(注3)。

候補者指名争いの初戦であるアイオワ州の党員集会が1/15に迫るなか、今後は候補者の絞り込みがより一層加速する見通しだ。トランプ氏に次ぐ2番手候補を巡っては、デサンティス氏の支持率が低下傾向にある一方、第1回討論会で存在感を発揮したラマスワミ氏、及び第3回で「脇役」とも評されたクリスティー氏は共に支持率の低迷が持続している。一方直近のニューヨーク・タイムズとシエナ大学の世論調査では、ヘイリー氏が激戦州においてバイデン大統領に対する優位性を示すなど、対トランプ候補としての地位を確立しつつある。

図表1
図表1

図表2
図表2

以上

前田 和馬


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前田 和馬

まえだ かずま

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済、世界経済、経済構造分析

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