街角景気が冷えるなら株価も冷える?

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月34,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月138程度で推移するだろう。
  • 日銀は2024年前半にマイナス金利を撤廃するだろう。
  • FEDはFF金利を5.50%(幅上限)で据え置くだろう。利下げは2024年後半を見込む。
目次

金融市場

  • 前日の米国株は上昇。S&P500は+1.6%、NASDAQは+2.0%で引け。VIXは14.2へと低下。
  • 米金利はツイスト・フラット化。予想インフレ率(10年BEI)は2.342%(▲2.1bp)へと低下。
    実質金利は2.320%(+4.4bp)へと上昇。長短金利差(2年10年)は▲41.3bpへとマイナス幅拡大。
  • 為替(G10通貨)はJPYが最弱。USD/JPYは151半ばへと上昇。コモディティはWTI原油が77.2㌦(+1.4㌦)へと上昇。銅は8035.5㌦(▲111.5㌦)へと低下。金は1937.7㌦(▲32.1㌦)へと低下。

図表1
図表1

図表2
図表2

図表3
図表3

図表4
図表4

図表5
図表5

注目点

  • 11月9日に発表された10月景気ウォッチャー調査は内需の冷え込みがやや厳しくなっていることを示唆。国内景気を推し量る上で有用な景気ウォッチャー調査は2月から8月まで現状と先行きが共に50を上回る珍しい状況を記録した後、直近2ヶ月は双方とも50を下回っている。

図表6
図表6

  • 3ヶ月前から現在への景況感変化を問う現況判断DIは49.5へと9月から0.4pt低下した。春闘賃上げ率が約30年ぶりの高水準で着地し、来年度も同程度かそれ以上の賃上げ要求が見込まれるなど賃上げ機運の高まりが支えになった一方、ペントアップデマンドの一巡に加え、食料品を中心とする生活必需品の値上がりが逆風となったみられ、景気に敏感な人々の景況感は悪化した。他方、類似指標の消費者態度指数は35.7へと小幅な改善に転じ、一旦は悪化に歯止めがかかった。

図表7
図表7

  • 現状判断DIの内訳は、まず家計動向関連が49.5と前月比横ばいに踏みとどまった。その内訳は飲食(52.9→57.2)が大幅に改善し、サービス(52.4→52.5)も小幅ながら改善。その反面、小売(48.2→47.8)が低下し、住宅(44.1→41.9)も弱かった。企業関連は49.5と前月比横ばいとなり、2ヶ月連続で50を割れた。海外経済の減速を映じて製造業(48.1→47.6)が低下、非製造業(52.1→50.2)も国内需要の一服を示唆する結果であった。雇用関連(51.5→50.4)も50近傍へと低下した。労働集約的な産業(宿泊、飲食、建設等)を中心に採用意欲は旺盛であるものの、労働需給のミスマッチによって人手不足が解消せず、企業の採用意欲が衰え(≒人員補強を諦める)、縮小均衡に向かっている可能性が懸念される。類似指標のサービス業PMIも10月に51.6へと急低下し、国内景気の風向きが変わりつつあることを示唆した。

図表8
図表8

  • 3ヶ月先の景気を問う先行き判断DIは48.4へと1.1pt低下。家計動向関連が47.8へと1.9pt低下し全体を下押しした。企業関連は49.4と横ばい。製造業(48.1→49.1)の上昇を非製造業(50.6→49.4)の低下が相殺した。他方、雇用関連は49.8へと0.9pt上昇した。

  • 景気ウォッチャー調査は速報性に優れていながら、予測精度が高いことが知られておりGDP(在庫を除いた「最終需要」)との連動性が認められている他、株価についても一定の関係が確認できる。単純に株価水準の変化と一定の連動性を有している他、景気ウォッチャーが改善傾向にある時、日本株は米国を上回る勢いで上昇するという関係が見て取れる。株価が景気ウォッチャーに影響を与えているという因果の向きの存在は否定できないが、それでも景気ウォッチャー低下基調を強めていることは日本株の不気味な兆候として認識しておくべきであろう。

図表9
図表9

図表10
図表10

図表11
図表11

藤代 宏一


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。