日本株を救う? コロナ対応で買ったPC の買い替え 半導体の在庫調整は進展 現在は「需要」待ちの時間

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月34,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月138程度で推移するだろう。
  • 日銀は2024年前半にマイナス金利を撤廃するだろう。
  • FEDはFF金利を5.50%(幅上限)で据え置くだろう。利下げは24年後半を見込む。
目次

金融市場

  • 前日の米国株は下落。S&P500は▲1.3%、NASDAQは▲1.6%で引け。VIXは19.2へと上昇。
  • 米金利は中期ゾーンを中心に金利上昇。予想インフレ率(10年BEI)は2.436%(+2.0bp)へと上昇。 実質金利は2.477%(+6.0bp)へと上昇。長短金利差(2年10年)は▲31.0bpへとマイナス幅縮小。
  • 為替(G10通貨)はUSDが堅調。USD/JPYは149後半へと上昇。コモディティはWTI原油が88.3㌦(+1.7㌦)へと上昇。銅は7972.5㌦(+2.0㌦)へと上昇。金は1955.3㌦(+32.6㌦)へと上昇。

米国 イールドカーブ、名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)、長短金利差(2年10年)
米国 イールドカーブ、名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)、長短金利差(2年10年)

(%) 米国 イールドカーブ
(%) 米国 イールドカーブ

(bp) 米国 イールドカーブ(前日差)
(bp) 米国 イールドカーブ(前日差)

米国 名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)
米国 名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)

米国 長短金利差(2年10年)
米国 長短金利差(2年10年)

経済指標

  • 9月米住宅着工件数は前月比+7.0%と8月の▲12.5%から反転増加も3ヶ月移動平均でみれば減少基調にある。建設業者の景況感を示すNAHB住宅市場指数が直近3ヶ月落ち込んでいることを踏まえると、10月以降も減少基調が予想される。

米国 住宅着工(許可)件数、NAHB住宅市場指数
米国 住宅着工(許可)件数、NAHB住宅市場指数

米国 住宅着工(許可)件数
米国 住宅着工(許可)件数

NAHB住宅市場指数
NAHB住宅市場指数

注目点

  • TOPIXの予想EPSと連動性を有するグローバル製造業PMIは9月に49.1となった。13ヶ月連続で50を下回っているものの、7月の48.6を底に緩やかな回復を遂げている。地域別では、日本が緩やかに低下する中、米国に底打ち気配がみられ、欧州も最悪期脱出の兆候が散見された。アジアでは中国が50超を維持する中、ここへ来てIT関連財の集積地である韓国と台湾の持ち直しが鮮明化しつつある。PMIが入手可能な主な国のうち、ヘッドラインが前月比で改善した国の割合は5割に近づいており潮目の変化を感じさせる。こうした傾向が続けば、海外経済の回復を通じて日本企業の業績拡大が期待される。

グローバル製造業PMI・TOPIX予想EPS、製造業PMI 前月比改善割合
グローバル製造業PMI・TOPIX予想EPS、製造業PMI 前月比改善割合

グローバル製造業PMI・TOPIX予想EPS
グローバル製造業PMI・TOPIX予想EPS

製造業PMI 前月比改善割合
製造業PMI 前月比改善割合

  • 日本株との関連が深いIT関連財の動向を把握するために韓国の生産統計に目を向けると、半導体生産の復調に牽引され鉱工業生産全体として持ち直している。この間の自動車生産の回復も効いており、製造業PMIは49.9と50をはっきりと視界に捉えている。スマホ販売が頭打ち感を強める中、世界的に半導体市況の調整は長引いているものの、在庫調整が進展する下で、韓国においては半導体の減産に歯止めがかかりつつある。なお当レポートの主要テーマではないため数値を紹介するにとどめるが、韓国の鉱工業生産の水準は2017年1月を100とすると108、それに対して日本は93である。

韓国 鉱工業生産、韓国 製造業PMI
韓国 鉱工業生産、韓国 製造業PMI

韓国 鉱工業生産
韓国 鉱工業生産

韓国 製造業PMI
韓国 製造業PMI

日本・韓国 鉱工業生産
日本・韓国 鉱工業生産

  • 次に台湾に目を向けると、こちらも底打ちの兆候が認められている。9月の製造業PMIは46.4となお50以下の領域に沈んでいるものの、2023年5~7月を底に上向き始めており、それと整合的に輸出受注も反転の兆しが窺える。背景にあるのはIT関連財の在庫調整進展。電子部品の出荷と在庫の前年比差分をとった出荷・在庫バランスは3月の▲41.6%から急速に切り返し直近値の7月は▲0.3%とほぼプラス圏に回帰している。今後、コロナ初期局面にあたる2020年に購入されたPCの一部が買い替え期に差し掛かるなどして需要が持ち直せば、シリコンサイクルは次なる上昇局面を迎える蓋然性が高まると期待される。当然のことながら、それは日本株の追い風となる。

台湾 製造業PMI、台湾 輸出受注
台湾 製造業PMI、台湾 輸出受注

台湾 製造業PMI
台湾 製造業PMI

台湾 輸出受注
台湾 輸出受注

台湾 電子部品 出荷・在庫バランス
台湾 電子部品 出荷・在庫バランス

藤代 宏一


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