共和党指名候補者による第2回討論会レビュー

~トランプ批判が開始された一方、際立った2番手は依然現れず~

前田 和馬

要旨
  • 2024年大統領選の共和党指名候補者が参加する第2回討論会(9/27開催)では、一部参加者がトランプ前大統領の欠席を批判したものの、総じてトランプ批判は限定的に留まった。
  • 第2回討論会において際立ったパフォーマンスを発揮した参加者はおらず、トランプ氏が大統領指名候補として支持率で圧倒的にリードする構図に変化はない。
  • 第3回討論会は11/8にトランプ氏とデサンティス氏の地元であるフロリダで開催が予定されている。2024年大統領選の投票日が1年を切るタイミングにおいて、トランプ氏が同討論会も欠席するのか、また2番手のデサンティス氏が討論会前後でどれだけ躍進できるのかが注目される。

9月27日、2024年大統領選の共和党指名候補者が参加する第2回討論会がカリフォルニア州にて開催された1 。同討論会に参加したのは、各種世論調査で2番手につけるデサンティス現フロリダ州知事(図表1)、30代起業家のラマスワミ氏、サウスカロナイナ州選出のスコット上院議員、ペンス前副大統領、ヘイリー元国連大使、トランプ氏に批判的なクリスティー前ニュージャージー州知事、バーガム現ノースダコタ州知事の7名である。また、第1回討論会に参加したハッチンソン前アーカンソー州知事は支持率が低位に沈んでいることを背景に同討論会への参加基準を満たさなかった。一方トランプ前大統領は第1回に続き今回の討論会も欠席した。

同討論会においては、デサンティス氏とクリスティー氏がトランプ氏の討論会欠席を批判した一方2、ヘイリー氏は「トランプ前大統領は、中国が我々の土地を買い占めていることや6000億ドルの知的財産を盗んでいることに焦点を当てなかった」と述べ、トランプ政権時に中国に対する安全保障対策が不足していたことを指摘した。とはいえ、トランプ批判は訴追に対する言及を含めて限定的に留まったとの見方が多い。Washington Postが「候補者たちは依然トランプを批判したがらない」と強調した一方 、Wall Street Journalは「(彼らは)トランプ支持者の怒りを買うことを警戒している」と言及した 3

具体的な政策討論を巡っては、まず政府閉鎖の可能性に関して、デサンティス氏やクリスティー氏がバイデン政権の対応を非難した一方、ヘイリー氏は政府閉鎖の際に現職議員に対する報酬の支払いを停止することを提案した。またUAW(全米自動者労組)のストライキを巡っては、スコット氏が「バイデンはストライキ現場ではなく南部国境に行くべき」と言及したほか、ラマスワミ氏は「(気候変動対策を推進する)ホワイトハウスの前で労働者はデモを行うべき」と述べるなど、ストライキの是非に関する直接的な言及を避ける候補者が目立った。スコット氏は討論会前に「ストライキ参加者は解雇されるべき」と述べた一方、ヘイリー氏はサウスカロナイナ州知事時代に外資系自動車メーカーを誘致したことを誇示したうえで自身を「組合潰し(union buster)」と表現するなど、候補者たちによる同ストライキへの肯定的な反応は多くない4 。他方中南米からの不法移民の流入を巡っては、強硬な移民政策が必要との見解で全候補者が一致した。

CNNの集計によると、約2時間の討論会における発言時間はラマスワミ氏が12分30秒と最も多く、デサンティス氏が12分8秒、スコット氏が11分21秒と続いた5 。第1回討論会で注目を集めたラマスワミ氏に対しては、ヘイリー氏が「あなたの話には少し唖然とする」と評したほか、スコット氏が同氏の中国でのビジネス展開に言及するなど、他の候補者からの攻撃が集中した。一方討論会の「勝者」を巡っては、FOX Newsが過去の政治功績をアピールできたデサンティス氏、Washington Postが幅広い党員の支持を獲得できる可能性を示したヘイリー氏、政治ニュースメディアのPoliticoが討論のパフォーマンスでスコット氏をそれぞれ挙げるなど、同討論会において際立った評価を受けた候補者はいなかった6

この間討論会を欠席したトランプ氏は、ストライキが続くデトロイト近郊で自動車産業の労働者に向けて講演した。バイデン政権の電気自動車普及策を批判しながら「私は自動車産業労働者の味方」と呼びかけるなど、民主党の支持基盤である労働組合員の支持獲得を試みている。とはいえ、トランプ氏が講演を行ったのは組合が存在しない自動車部品工場であり、UAWのフェイン委員長は「トランプ氏は億万長者のために動き、労働者のことは何も考えていない」と述べるなど、9/26に同氏の招待でストライキ現場を訪問したバイデン大統領とは正反対の対応を示している。

なおトランプ氏が支持率で圧倒的にリードしている構図に変化はなく、討論会の最後にはモデレーターの一人が「今日の登壇者が誰も辞退しなければ、トランプが共和党の指名候補となる」と述べる一幕もあった。 次回討論会は11/8にトランプ氏とデサンティス氏の地元であるフロリダで開催される。2024年大統領選の投票日が1年を切るタイミングにおいて、トランプ氏が引き続き同討論会を欠席するのか、また2番手につけるデサンティス氏が地元開催の討論会前後でどの程度まで支持率を伸ばせるのかが注目される。なお、第3回討論会の参加には世論調査における4%以上の支持、及び7万件以上の寄付などの各種要件を満たす必要があり、今回不参加となったハッチンソン氏、及びこれまで芳しいパフォーマンスを示せていないバーガム氏は同討論会に参加できないとの見方が強い 7


前田 和馬


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前田 和馬

まえだ かずま

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済、世界経済、経済構造分析

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