ラマスワミ氏が共和党指名候補として存在感

~圧倒的な支持を持つトランプ前大統領は最初の討論会を欠席~

前田 和馬

要旨
  • 8月23日、2024年大統領選に向けた共和党指名候補者の参加するテレビ討論会が開催され、38歳の起業家ラマスワミ氏が存在感を示した。討論会直後の世論調査では、「最も良いパフォーマンスを発揮した参加者」として、デサンティス氏が29%、ラマスワミ氏が26%の支持を集めた。
  • トランプ前大統領は圧倒的な支持を背景に同討論会を欠席したほか、今後の討論会参加にも消極的な姿勢を示している。共和党候補による次回討論会は9月下旬に実施されるが、トランプ氏不在で2番手争いが進展する可能性がある。

8月23日、ウィスコンシン州ミルウォーキーにて、2024年大統領選の共和党指名候補者が参加する初めてのテレビ討論会が開催された。同討論会に参加したのは、各種世論調査で2番手につけるデサンティス現フロリダ州知事(図表1)、参加者の中で38歳と最年少の起業家ラマスワミ氏、サウスカロナイナ州選出のスコット上院議員、ペンス前副大統領、ヘイリー元国連大使、トランプ氏に批判的なクリスティー前ニュージャージー州知事、ハッチンソン前アーカンソー州知事、バーガム現ノースダコタ州知事の8名である。

討論会では8人の中で中央付近に位置したラマスワミ氏が、グーグルトレンドで検索ランキングが急上昇するなど存在感を示した(図表2)。同氏は「段階的な変化と革命のどちらを望むのか」と聴衆に問いかけたほか、「トランプ氏は21世紀最高の大統領」や「気候変動はデマ」など過激とも捉えられかねない発言で注目を浴びた。またペンス前副大統領がラマスワミ氏に対して「(政治)経験のない新人は必要ない」、クリスティー氏が「ChatGPTのようだ」と攻撃するなど、他の候補者が2番手につけるデサンティス氏よりも警戒感を示したことが同氏に対する注目を際立たせた。ラマスワミ氏は最近のラジオ番組でも「米国が台湾を守るのは2028年まで」と発言して波紋を呼ぶなど、今後同氏の支持が拡がりを見せる場合にはその言動に益々注目が集まることが予想される。

他方デサンティス氏はバイデン政権への批判を繰り返した一方、トランプ氏への強い批判は避けた。また「トランプ氏が裁判で有罪になっても大統領候補になった場合には支持するか」との質問には、クリスティー氏とハッチンソン氏を除く6名が支持する意向を示したものの、ラマスワミ氏が真っ先に挙手する一方、デサンティス氏やペンス氏は周りの様子を見ながら挙手するなど、トランプ氏に対する姿勢にも候補者間で違いがみられた。

討論会後にワシントンポスト等が実施した世論調査では、討論会で最も良いパフォーマンスを発揮した参加者として、デサンティス氏が29%、ラマスワミ氏が26%と多くの支持を集め、ヘイリー氏が15%、ペンス氏が7%と続いた。他方討論会で好ましい結果を出せなかった候補としては、クリスティー氏が22%と最多となり、ハッチンソン氏が14%、ペンス氏が13%、ラマスワミ氏が11%となった(図表3)。

同討論会の視聴数は平均1,280万人と、トランプ前大統領が参加者と激しい討論を交わした2015年討論会の視聴者数2,400万人を大幅に下回った。とはいえ、同視聴者数は当初の見通しを上回ったため、共和党指名候補者レースの関心の高さを示しているとの見方もある1。また、トランプ氏は自身の知名度と大統領時代の功績を背景に討論会を欠席した一方、収録済みのインタビュー動画を討論会の開始直前にインターネット上に公開した。なお同動画が掲載されたX(旧Twitter)上の投稿のアクセス数は翌朝に1.5億回に達したものの、この数字は実際の動画視聴者数を必ずしも反映していないとの見方が多い2

共和党の指名候補を争う次の討論会は9月27日にカリフォルニアで開催される。トランプ氏が9月の討論会に参加するかは依然不透明であるが、今回の欠席の際には「I will therefore not be doing the debates」と討論会を複数形で言及しており、当面討論会には参加せず、トランプ氏不在で共和党指名候補の2番手争いが進む可能性がある。

図表1: 年大統領選に向けた共和党指名候補の支持率
図表1: 年大統領選に向けた共和党指名候補の支持率

図表2:討論会前後のGoogle Trends の推移、図表3:討論会の印象に関する世論調査
図表2:討論会前後のGoogle Trends の推移、図表3:討論会の印象に関する世論調査

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前田 和馬


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前田 和馬

まえだ かずま

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済、世界経済、経済構造分析

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