2023・2024年度日本経済見通し(2023年8月)(2023年4-6月期GDP1次速報後改定)

新家 義貴

最新の見通しは、2023・2024年度日本経済見通し(2023年11月)(2023年7-9月期GDP1次速報後改定)をご覧下さい。

要旨

図表1
図表1

  • 実質GDP成長率の見通しは、23年度が+1.8%(23年6月時点予測:+1.0%)、24年度が+1.0%(同+1.3%)である。暦年では2023年が+2.0%(同+1.2%)、2024年が+1.0%(同+1.2%)となる。23年4-6月期の実質GDP成長率が前回予測時点での見通しを大幅に上振れたことに加え、過去数値の改定でゲタが上がったこともあり、23年度見通しを大幅に上方修正した。

  • 23年4-6月期の実質GDPは前期比年率+6.0%と極めて高い伸びとなった。しかし、輸入の減少により成長率が大きく押し上げられていることや、個人消費の減少を主因として内需が弱いことなど、内容は今一つで、割り引いてみる必要がある。特に個人消費は、ウィズコロナの進展を背景に伸びが加速するとの期待があっただけに失望感が強い。見かけ上の成長率は極めて高いものの、実態としては、景気の緩やかな回復傾向が続いているといった程度の評価が妥当である。

  • 23年前半は予想を上回る高成長となったが、こうした伸びは続かない。23年後半は、好材料と悪材料が入り混じるなか、低成長にとどまると予想する。特に23年7-9月期については、4-6月期に輸入が大幅に下振れた反動が生じることからマイナス成長に転じる可能性が高い。

  • 先行きの好材料はインバウンド需要のさらなる拡大だ。昨年秋以降、インバウンド需要は急増しているが、中国人観光客の戻りが鈍いことを主因として足元では増加ペースが鈍化している。もっとも、中国は8月10日に日本への団体旅行の解禁を行っており、今後は中国人観光客が大幅に増加する可能性が高まっている。23年7-9月期以降は再びインバウンド需要が加速し、景気の下支え要因になる可能性が高い。

  • 個人消費は緩やかな増加を見込む。経済活動正常化の流れは変わっておらず、出遅れていたサービス消費を中心に回復を続ける可能性が高い。もっとも、4-6月期の足踏みに象徴されるように、これまで回復が続いていた個人消費の増勢に陰りが見える点は懸念される。個人消費はこれまで、コロナ禍で水準を大きく落としたところからの正常化の力が働いていたことで回復してきたが、消費水準がある程度戻ってきたことで、こうした押し上げ効果が弱まりつつある可能性がある。個人消費の水準は、実質でもコロナ前に近付き、名目でははっきり上回っている。物価上昇が続くなか、今後は貯蓄を取り崩す段階に入ってくるが、貯蓄の取り崩しが順調に進むことは考えにくい。先行きは消費の伸びがペースダウンする可能性が高く、緩やかな増加にとどまるだろう。

  • 外需は低調な推移が予想され、今後の成長率を抑制する要因となる。世界的な財需要の低迷は続いており、製造業部門は未だに悪化傾向にある。景気の先行き懸念に伴い発注が手控えられているほか、需要の財からサービスへのシフトも影響している。グローバルな製造業の動向に影響されやすい日本からの輸出は今後も下押し圧力を受ける。加えて、利上げの効果が顕在化することも今後の世界景気を下押しする。米国景気は足元で依然堅調に推移しており、先行きもリセッションに陥る可能性は低いが、過去の利上げの累積的な悪影響がタイムラグをもって顕在化することを考えると、景気が減速することは避けられない。既に銀行の融資基準が大幅に厳格化されていることを踏まえれば、今後の企業向け融資の縮小を通じて設備投資が抑制される可能性も高い。こうしたなか、日本への悪影響も避けられず、財輸出は低調に推移すると予想している。

  • 大きな流れとしては、コロナ禍からの経済活動正常化の動きが続くことから、今後も景気は回復基調で推移するとみられるが、外需の下押しにより成長ペースは抑制されることになる。先行きの景気回復ペースは緩やかなものにとどまるだろう。

  • 一方、24年には、世界的な製造業の調整局面は一巡することが予想される。在庫調整の終了により製造業の生産悪化にも歯止めがかかり、景況感も上向く。日本からの財輸出も持ち直しに転じる見込みだ。こうした状況を受け、企業の設備投資意欲も持ち直すだろう。個人消費は緩やかな伸びにとどまる一方、輸出が持ち直しに転じることで、24年度の景気は上向く可能性が高い。なお、年度の成長率見通しは23年度が24年度を上回るが、これは23年前半の成長率が極めて高かったことにより発射台が上昇したことによるものである。年度内成長率でみれば24年度が23年度を上回る見込みだ。

  • 消費者物価指数(生鮮食品除く総合)の見通しは、2023年度が前年度比+2.8%(前回見通し時点:+2.6%)、24年度が+1.4%(同+1.4%)である。輸入物価が下落しコスト上昇圧力が弱まりつつあることや、22年後半のCPIの上昇ペースが非常に速かった裏が出ることから、CPIコアは23年6月でピークをつけ、先行きは鈍化方向で推移する。もっとも、企業の価格引き上げ姿勢が強いことや賃金上昇分の価格転嫁の可能性などを考えると、鈍化ペースは緩やかなものにとどまるとみられ、23年末でも前年比+2%台で推移する可能性が高い。一方、24年度については、サービス価格は上昇する一方、エネルギー価格の下落に加え、コスト上昇圧力の一服から食料品等でも鈍化が鮮明となることで、CPIコアも上昇率が縮小すると予想する。24年半ばには+2%を割り込み、その後も鈍化傾向で推移するだろう。

図表2
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図表3
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図表4
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新家 義貴


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

新家 義貴

しんけ よしき

経済調査部・シニアエグゼクティブエコノミスト
担当: 日本経済短期予測

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