ニュージーランド:金融政策(23 年7月)

~市場予想通りの据え置き決定、インフレ抑制の結果は4~6月消費者物価指数で確認へ~

阿原 健一郎

要旨
  • 7月12日、RBNZは政策金利の据え置き(5.50%)を決定。据え置きは市場予想通り。据え置きは約2年ぶり(21年8月会合以来)。直近12会合は連続で利上げを実施していた。
  • 据え置きの背景は、現行の金利水準は想定通り必要とされるだけ支出とインフレ圧力を抑えている、としている。先行きは、当面は金利を抑制的な水準に維持する必要がある、として据え置きを示唆した。
  • 市場予想通りの据え置きなるも、利上げ停止が意識され、NZドルは対米ドル、対日円いずれも一時減価。

7月12日、ニュージーランド準備銀行(RBNZ)は政策金利(オフィシャルキャッシュレート)の据え置き(5.50%)を決定した。据え置きは市場予想通り(据え置き:25/25人、ロイター調査)。据え置きは21年8月会合以降、約2年ぶり。直近12会合連続で利上げを実施していたが、前回会合(5月24日)では、利上げペースを鈍化させていた(+25bps、5.25%→5.50%)。中銀が23年の政策金利は5.50%でピークとなるとの見通しを公表していたことからも、予定通りの据え置きとなった(図表1)。

据え置きの背景について、RBNZは、「現行の金利水準は想定通り必要とされるだけ支出とインフレ圧力を抑えている」とした。具体的には、国内支出の抑制として住宅建設活動の縮小を挙げている。住宅着工許可件数の推移を確認すると、金融引き締めの開始以降は金利上昇に伴い件数が減少し、足もとでは幾分落ち着いている(図表2)。ニュージーランドは消費者物価指数を四半期でしか公表していないため、直近のインフレ率は4月20日公表の1~3月期の数値だが、新規住宅価格の前年比寄与度は1.2%pt程度と、プラス幅は縮小していたものの依然としてインフレ率上昇に大きく寄与していた。RBNZの想定通り、7月19日公表の4~6月期消費者物価指数は、足もとの住宅建設活動の縮小がインフレ率を幾分下押しするとみられる。

先行きについて、RBNZは、「インフレ率を1~3%の目標レンジに戻すことを確実にするため、政策金利は当面抑制的な水準に維持する必要がある」とし、当面の政策金利の据え置きを示唆した。現時点で公表されているRBNZの見通しでは、インフレ率は23年に6.7%、24年に4.3%、25年に2.3%と低下していくとみている。次月の決定会合で見通しが修正される可能性はあるが、今後は、現在の政策金利を据え置きながら、想定する見通しと実体経済が乖離しないか注視していくと思われる。

今回は市場予想通りの据え置きであったものの、利上げ停止が意識され、一時、NZドルは米ドルに対して、約▲0.7%減価し(図表3)、日本円に対して約▲0.9%減価した(図表4)。その後、同日夜に公表された米国CPIが市場予想を下回ったことを受け、対米ドルでは政策発表前を上回る水準までNZドルが買い戻されている。

図表1
図表1

図表2
図表2

図表3
図表3

図表4
図表4

図表5
図表5

阿原 健一郎


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阿原 健一郎

あはら けんいちろう

経済調査部 主任エコノミスト
担当: アジアパシフィック経済、世界経済

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