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2023.07.06
アジア経済
オーストラリア経済
オーストラリア:金融政策(23 年7月)
~市場予想が割れるなか利上げを一時停止、1か月間の猶予期間で政策効果を見極めへ~
阿原 健一郎
- 要旨
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- 7月4日、RBAは政策金利の据え置き(4.10%)を決定。市場予想は、利上げと据え置きで割れていた。据え置きは3会合ぶり、直近では2会合連続の利上げを実施していた。
- 据え置きの背景は、今回の決定はこれまでの金利上昇の影響と経済見通しを評価する時間を与える、と金融引き締めの効果を見極めるとした。先行きは、7月公表の四半期インフレ率、雇用統計次第では再度利上げに踏み切る可能性も十分にある。
- 据え置きを受けて、豪ドルは対米ドル、対日本円いずれも一時減価した。
7月4日、オーストラリア準備銀行(RBA)は政策金利(オフィシャルキャッシュレート)の据え置き(4.10%)を決定した。据え置きは3会合ぶり、直近では2会合連続の利上げを実施していた。市場予想は、利上げと据え置きで割れていた(+25bps:16/31 人、据え置き:15/31 人、ロイター調査)。
据え置きの背景について、RBAは声明文で、「今回の決定は、これまでの金利上昇の影響と経済見通しを評価する時間を与える」としている。4月会合の据え置き以降、インフレ抑制を確実なものとするために更なる金融引き締めを実施してきたが、ここでその効果を見極めることを決定した。インフレ率の推移を確認すると、足もと5月は総合 CPI が前年比+5.6%と4月(同+6.8%)から大きく伸びが鈍化したものの、その主因はガソリンをはじめとする燃料価格の低下であり、持続的なインフレ圧力が大きく弱まったわけではない。実際、価格変動の大きい品目と旅行費を除く CPI は5月前年比+6.4%と4月(同+6.5%)からは小幅な低下に留まっている(図表1)。RBAは、足もとのインフレ率について、「インフレ率はピークを過ぎ、5月月次 CPI はさらなる低下を示した。しかし、インフレ率は依然として高く、今後もしばらくはその状態が続くだろう」としている。また、「高インフレが人々の期待に定着してしまうと、あとでインフレを抑制するのに多大なコストがかかる」とインフレ期待の上昇に懸念を示した。インフレ率の高止まりの弊害を認識しつつも、経済活動が減速している現状から、これ以上の金融引き締めが必要なのかどうか、既往の利上げの効果をこの1か月で確認したうえで判断したい、という背景が見える。
労働市場については、「労働市場の状況は依然として非常に逼迫しているが、緩和してきている」としつつも、「労働参加率は過去最高を記録し、失業率は 50 年ぶりの低水準に近い水準を維持している」、「継続的な高インフレへの期待が物価と賃金の両方の大幅な上昇に寄与するリスクを引き続き警戒している」とし、人件費と企業の価格設定を注視していくとしている。ここでも、労働市場が逼迫するもとでインフレ期待が上昇する懸念について言及している。
先行きについては、「適切な期間内にインフレ率が目標に戻ることを確実にするためには、金融政策の更なる引き締めが必要になるかもしれないが、それは経済とインフレがどのように推移するかに依る」と前回会合から変化はなかったものの、政策委員会が細心の注意を払っていく要素として挙げているもののうち、前回会合までの「インフレ率と労働市場の見通し(“outlook”)」が「インフレ率と労働市場の予測(“forecasts”)」という表現に変更された。次回8月の決定会合では四半期金融政策報告書の公表を控えていることもあり、今回の政策決定で得た1か月間の猶予期間で、既往の利上げの効果を確認しつつ、インフレ率や失業率、賃金の予測を重点的に行っていくという意図が見て取れる。7月公表の四半期インフレ率が基調として想定以上に高止まりした場合や、労働市場の逼迫が想定以上に緩和しなかった場合等、今後公表される経済指標の内容が、RBAのインフレ予測を追加的に上方修正せざるを得ないようなものであれば、8月会合で再度利上げに踏み切る可能性は十分にある。
なお、今回の据え置き決定を受けて、豪ドルは一時、米ドル、日本円に対してそれぞれ約▲0.5%減価した(図表2、3)。
阿原 健一郎
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 阿原 健一郎
あはら けんいちろう
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経済調査部 主任エコノミスト
担当: アジアパシフィック経済、世界経済
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阿原 健一郎
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