都区部版・日銀基調的インフレ率の試算(2023/6)

~3指標はそろって低下、緩和継続路線を後押しへ~

星野 卓也

要旨
  • 本日公表された6月都区部CPIを用いて、日銀が全国CPIをもとに公表している刈込平均値・加重中央値・最頻値を試算した。刈込平均値・加重中央値・最頻値の上昇率は今回いずれも低下、価格転嫁圧力の弱まりを示唆。全国版の値も低下を見込むが、それは日銀の緩和継続を後押しするだろう。
目次

基調的インフレ率はそろって低下

以前のレポート1で試算した東京都区部版の基調的インフレ率3指標について、本日公表の6月都区部CPIを用いて計算した。刈込平均値(全国ウェイト換算)は5月:+3.0%→6月:+2.8%、加重中央値(全国ウェイト換算)は5月:+1.1%→6月:+0.7%、最頻値は5月:+3.8%→6月:+3.4%となった(いずれも前年比)。3指標の伸び率はいずれも低下しており、価格転嫁圧力の弱まりを示唆している。

日銀の植田総裁は28日のECBフォーラムの討論会において、緩和継続の理由として「基調的な物価上昇率が2%より低い」点を改めて強調した。「基調的な物価」が何を指すのかは必ずしも明示されているわけではないが、これらの品目別価格上昇率の分布に着目した指標もそれを判断する大きな材料だと考えられる。来月公表される全国版の基調的インフレ率3指標も低下を見込むが、それは日銀の緩和継続を後押しするだろう。

図表1
図表1

図表2
図表2

以上

星野 卓也


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

星野 卓也

ほしの たくや

経済調査部 主席エコノミスト
担当: 日本経済、財政、社会保障、労働諸制度の分析、予測

執筆者の最新レポート

関連レポート

関連テーマ