“投資詐欺広告”
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景気予測調査から見た四半期決算見通し

~生活関連サービス・娯楽・一部素材業種で利益大幅上方修正の可能性~

永濱 利廣

要旨
  • 2023 年4-6月期の法人企業景気予測調査を見ると、23 年度計画では、売上高計画が小幅修正にとどまるも、経常利益計画は製造業中心に下方修正。
  • 増収計画の上方修正率が高い業種は「不動産」「化学」「業務用機械」「農林水産」「運輸・郵便」と続く。「不動産」については、4月に執行部が交代した日銀が当初の想定以上にハト派なスタンスにより、早期の金融政策の出口観測が後退したことが織り込まれた可能性が示唆される。「化学」や「業務用機械」については、コスト増に伴う価格転嫁の影響が大きいことが推察される。「農林水産」「運輸・郵便」については、コロナからのリオープン等により、供給拡大も見込んでいることが予想される。
  • 経常利益計画が大幅上方修正されている業種は「生活関連サービス」「パルプ・紙・紙加工品」「娯楽」「窯業・土石」「不動産」の順となる。「生活関連サービス」や「娯楽」については、コロナからのリオープンやインバウンド消費の拡大等が進むこと期待されている可能性が推察される。「パルプ・紙・紙加工品」や「窯業・土石」は、価格転嫁が進んでいることに加えて、国際商品市況価格の下落等により原材料価格が低下していること等が寄与している可能性。「不動産」の上方修正については、早期の金融政策の出口観測が後退したことにより売上高計画が上方修正された要因。
  • より直近の動向が反映される6月日銀短観の業種別収益計画(7月公表)も今期業績見通しを読み解く手がかりとして注目したい。
目次

経常利益が下方修正

6月 13 日に公表された 2023 年4-6月期法人企業景気予測調査は、今年5月下旬にかけて資本金1千万円以上の法人企業に対して行った景気予測調査であり、今期の業種別企業業績計画を予想するための先行指標として注目される。

そこで本稿では、今年7月下旬からの四半期決算発表で、今年度の企業業績計画の上方修正が見込まれる業種を予想してみたい。

下図は、法人企業景気予測調査の調査対象企業の各調査時期における売上高と経常利益計画の今年度見通しの推移を見たものである。まず売上高を見ると、製造業・非製造業とも増収率は微修正にとどまっている。従って、四半期決算でも今期の売上高計画が上方修正される業種には注目が集まるものと推察される。

一方の経常利益は、製造業・非製造業とも今年度減益計画の減益幅が前回調査から拡大している。このことから、7月下旬からの四半期決算発表では、製造業を中心に今年度の経常利益計画の下方修正が出てくることが予想される中でも、経常利益計画の上方修正が打ち出される業種には注目が集まるものと推察される。

図表1
図表1

増収率上方修正の「不動産」「化学」「業務用機械」

以下では、7月下旬からの四半期決算で、今期売上高計画で上方修正が期待される業種を見通してみたい。下表は業種別売上高計画を前年比と前回調査からの修正率で比較したものである。

図表2
図表2

結果を見ると、23 年度は「木材・木製品」「石油・石炭製品」「非鉄金属」「鉱・採石・砂利採取」「電気・ガス・水道」以外の全業種で増収計画となっている。

こうした中で、前年比の上方修正率が高い業種は「不動産」「化学」「業務用機械」「農林水産」「運輸・郵便」であるが、小幅の上方修正率となっている。なお、「業務用機械」の主な製品としては、事務用、サービス・娯楽用、計量器、測定器、分析機器・試験機、測量、理化学機械、医療用品、光学・レンズ、武器等が含まれる。

特に「不動産」については、4月に執行部が交代した日銀が当初の想定以上にハト派なスタンスとなっており、早期の金融政策の出口観測が後退したことが想定されている可能性が示唆される。

一方、「化学」や「業務用機械」については、逆に経常利益計画が下方修正されているため、コスト増に伴う価格転嫁の影響が大きいことが推察される。

他方、「農林水産」「運輸・郵便」については、コロナからのリオープン等により、供給拡大も見込んでいることが予想される。

「生活関連サービス」「パルプ・紙・紙加工品」「娯楽」等が増益率大幅上方修正

続いて、経常利益計画から増益率の上方修正が期待される業種を見通してみよう。結果を見ると、多くの業種で減益計画となっており、これは国内企業物価や企業向けサービス価格上昇等に伴うコスト増が主因と推察される。

こうした中、増益率の上方修正が目立つ業種は「生活関連サービス」「パルプ・紙・紙加工品」「娯楽」「窯業・土石」「不動産」等であり、いずれも二桁を上回る上方修正率となっている。なお、「生活関連サービス」を詳細に見ると、我々の生活に密着したクリーニング業や理容業、美容業、銭湯、スーパー銭湯、エステティック業、リラクゼーション業、ネイルサービス業、旅行業、結婚相談業、家事サービス業、冠婚葬祭業、等になる。

このため、旅行業を含む「生活関連サービス」や「娯楽」については、コロナからのリオープンややインバウンド消費の拡大等が進むこと期待されていること等により、経済が正常化に向かう動きが寄与してい可能性が推察される。

一方、「パルプ・紙・紙加工品」や「窯業・土石」が上方修正されている背景には、価格転嫁が進んでいることに加えて、国際商品市況価格の下落等により原材料価格が低下していること等が寄与している可能性があろう。

他方、「不動産」の上方修正については、上述のとおり早期の金融政策の出口観測が後退したことにより、売上高計画が上方修正された影響が大きい可能性が推察される。

なお、日銀が7月に公表する6月短観の業種別収益計画(大企業)は法人企業景気予測調査に比べて聞き取りのタイミングが若干遅いことから、直近の影響をより織り込んでいる可能性が高いため、6月短観における大企業の収益計画も四半期決算と今期業績見通しを読み解く手がかりとして注目したい。

図表3
図表3

永濱 利廣


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

永濱 利廣

ながはま としひろ

経済調査部 首席エコノミスト
担当: 内外経済市場長期予測、経済統計、マクロ経済分析

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