2023・2024年度日本経済見通し(2023年5月)(2023年1-3月期GDP1次速報後改定)

新家 義貴

最新の見通しは、2023・2024年度日本経済見通し(2023年8月)(2023年4-6月期GDP1次速報後改定)をご覧下さい。

要旨

日本・GDP成長率予測値
日本・GDP成長率予測値

  • 実質GDP成長率の見通しは、23年度が+0.8%(23年3月時点予測:+0.8%)、24年度が+1.4%(同+1.4%)である。暦年では2023年が+0.9%(同+0.7%)、2024年が+1.3%(同+1.4%)となる。

  • 23年1-3月期の実質GDPは前期比年率+1.6%と持ち直したが、先行きについても緩やかな回復を予想する。押し上げ要因となるのはインバウンド需要の復活とサービス消費の持ち直しである。これまで続けられていた水際対策が終了したことで訪日へのハードルは下がっており、今後は外国人観光客のさらなる増加が期待できる。足元で低水準にある中国人観光客も次第に持ち直しに向かうとみられ、今後もインバウンド需要の増加が景気の下支え要因となる。

  • 5月8日より新型コロナウイルスの感染症法上の分類が、これまでの2類相当から季節性インフルエンザと同じ5類に引き下げられたことに象徴されるように、コロナ禍からの正常化の動きは強まる方向にある。濃厚接触者の外出制限が撤廃されることや、感染時にも幅広い医療機関で受診できるようになることなどは、消費者の慎重姿勢を和らげ、ウィズコロナを一層進展させることに繋がるだろう。出遅れていたサービス消費の持ち直しが見込まれることで、物価高が続くなかでも個人消費は回復の動きを続けることが予想される。

  • 一方、低調な外需が引き続き成長を抑制する。世界的な財需要の低迷は続いており、製造業部門は未だに悪化傾向にある。景気見通しの悪化に伴い発注が手控えられているほか、需要が財からサービスにシフトしていることも影響しているとみられる。グローバルな製造業の動向に影響されやすい日本からの輸出は今後も下押し圧力を受けるだろう。こうした製造業部門の悪化に加え、利上げの効果が顕在化することも今後の世界景気を下押しする。米国景気は足元で依然底堅さを保っているが、過去の利上げの累積的な悪影響がタイムラグをもって顕在化することを考えると、景気は先行き下押しされるだろう。既に銀行の融資基準が大幅に厳格化されていることを踏まえれば、今後の企業向け融資の縮小を通じて設備投資が抑制される可能性は高い。こうしたなか、日本への悪影響も避けられず、財輸出は今後も低調に推移すると予想している。また、我が国景気の牽引役として期待される設備投資についても、輸出低迷で先行き不透明感が強いなか、企業が投資を積極化させることは考えにくく、投資手控えも生じやすくなる。

  • サービス消費の拡大やインバウンド需要の持ち直しに代表されるコロナ禍からの経済活動正常化の動きが続くことから、今後も景気は回復基調で推移するとみられるが、外需の下押しにより成長ペースは抑制されることになる。23年後半の成長率は+1%に届かず、回復ペースは緩やかなものにとどまると予想している。

  • 一方、24年になれば、世界的な製造業の調整局面は一巡することが予想される。在庫調整の終了により製造業の生産悪化にも歯止めがかかり、次第に景況感も上向いてくるだろう。日本からの財輸出も持ち直しに転じる見込みだ。こうした状況を受け、企業の設備投資意欲も持ち直すだろう。コロナ禍からの正常化に伴うリバウンド局面が一巡することで個人消費は緩やかな伸びにとどまる一方、輸出が持ち直しに転じることで、24年の景気は上向く可能性が高い。

  • 消費者物価指数(生鮮食品除く総合)の見通しは、2023年度が前年度比+2.7%(前回見通し時点:+2.1%)、24年度が+1.4%(同+1.2%)。企業の価格転嫁意欲が想定以上に強いことから、23年度について大幅に上方修正した。足元では、エネルギー以外のコアコア部分で伸びが大幅に高まっている。食料品のみならず、その他の品目でも伸びが高まっており、企業の価格転嫁が従来の想定以上に進んでいることが確認できる。過去の円安等によるコスト上昇の未転嫁分が残っていることに加え、電気代やガス代の上昇、人件費負担の増加等が値上げの理由として挙げられるようになっており、しばらくは積極的な価格転嫁が実施される可能性が高い。川上からの物価上昇圧力が足元でピークアウトしつつあることや、22年の物価上昇ペースが非常に速かった裏が出ることも相まって、23年後半については鈍化を見込むが、23年末でも前年比+2%前後で推移するとみられ、前回見通し時点で想定していたよりも鈍化ペースは鈍いものにとどまるだろう。

日本経済予測総括表
日本経済予測総括表

図表 実質GDPの見通し(四半期別推移)
図表 実質GDPの見通し(四半期別推移)

【実質GDP成長率の予測(前期比年率、寄与度)】
【実質GDP成長率の予測(前期比年率、寄与度)】

新家 義貴


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

新家 義貴

しんけ よしき

経済調査部・シニアエグゼクティブエコノミスト
担当: 日本経済短期予測

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