東京都区部版・日銀基調的インフレ率の試算

~4月の基調的インフレ率指標は加速へ~

星野 卓也

要旨
  • 日銀が全国CPIを用いて作成している基調インフレ率3指標(刈込平均値・加重中央値・最頻値)について、東京都区部CPIを用いて計算、日銀公表値の早期把握を試みた。作成した指標で日銀試算値の動向を概ね追うことができた。作成した3指標でみると、4月はいずれも加速。5月下旬に公表される日銀公表値も伸び率の加速が見込まれる。
目次

日銀の基調インフレ率3指標を都区部CPIで試算:4月は加速へ

4月28日、日銀の植田新総裁が初の金融政策決定会合に臨み、金融政策の現状維持を決めた。緩和を粘り強く続ける姿勢を示す一方で、総裁会見では2%の物価目標について「基調的インフレ率は徐々に上昇を続けていて、安定的な2%の可能性も出てきてはいる」、「現在は基調的なインフレ率が持続的安定的に2%には達していないという判断だが、これが1年半の間に変わる可能性はゼロではないわけで、そうすれば当然、それに伴って政策変更はありうる事になるかと思う」といったように、今後のデータ次第では政策変更を行う姿勢も示している。

「データ次第」の姿勢を示す植田総裁の下で、物価の基調をみる重要性は増していると思われる。現在、日銀は基調的なインフレ率の指標として、全国CPIの公表2営業日後に刈込平均値・加重中央値・最頻値の3つの値を毎月公表している。いずれも物価の品目別分布に着目したもので、日銀自身も物価の基調をみるための参考にしていると考えられる。

そこで、全国CPIに先んじて公表される東京都区部CPIについて、当方で極力日銀作成手法に近づけた形で3指標の推計を行ってみた。結果は次ページの資料の通りである。作成した都区部版・基調インフレ率は、日銀の公表する全国CPIの基調インフレ指標の動きを概ね追うことができた。全国・都区部のウェイトの違いによる影響を抑える観点から、刈込平均値と加重中央値については公表されている品目別都区部CPIの値に全国CPIのウェイトを用いることで、日銀公表値に値を近づける調整を施した値も併せて求めている。

4月28日に公表された4月都区部CPIについてみると、刈込平均値(全国ウェイト)は2023年3月:+2.7%→2023年4月:+3.0%、加重中央値(全国ウェイト)は同:+0.7%→同:+0.8%、最頻値は同:+2.8%→同:+3.5%といずれも伸び率が加速した。5月下旬に公表される日銀公表値も伸び率の加速が見込まれる。基調的なインフレ率を早期に把握する観点で、同指標の動向を次月以降もウォッチしていきたい 。

図表1
図表1

以上

  1. 4月の東京都区部CPIの評価については、Economic Indicators「消費者物価指数(東京都区部・23年4月)

~コアコアがさらに加速で、事前予想をはっきり上振れ~」(2023年4月28日)をご参照ください。

https://www.dlri.co.jp/report/macro/247061.html

星野 卓也


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

星野 卓也

ほしの たくや

経済調査部 主席エコノミスト
担当: 日本経済、財政、社会保障、労働諸制度の分析、予測

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