“投資詐欺広告”
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景気予測調査から見た四半期決算見通し

~円安進展等により、輸出関連業種で経常利益大幅上方修正の可能性~

永濱 利廣

要旨
  • 2022年10-12月期の法人企業景気予測調査を見ると、22年度は売上高・経常利益計画とも軒並み上方修正となり、特に製造業では前回までの減益計画から増益計画に上方修正。
  • 増収計画の上方修正率が高い業種は「石油・石炭製品」「電気・ガス・水道」「娯楽」「農林水産」と続く。「娯楽」は、コロナからの正常化や水際対策緩和期待等により、移動や接触を伴う経済活動が正常化に向かっていることが寄与している可能性が推察される。「石油・石炭製品」「電気・ガス・水道」「農林水産」はいずれも減益計画なことから、想定以上の円安進展などで原材料や仕入れ価格の水準がさらに引きあがったことに伴う価格転嫁が寄与している可能性。
  • 経常利益計画が大幅上方修正された業種は「自動車」「鉄鋼」「その他物品賃貸」「その他輸送機械」「電気機械」の順となる。特に、『その他物品賃貸』以外の業種は、典型的な輸出関連業種のため、当初の想定以上に円安が進展したことが経常利益の押し上げに寄与していることに加え、輸送機械や電気機械については半導体供給の改善に伴う生産や販売の拡大も寄与している可能性が推察される。
  • 一方、「その他物品賃貸」も大幅増益計画に上方修正されている。ここに含まれるのは、映画・演劇用品賃貸業や貸衣装業などである。このため、各種観光支援策や水際対策緩和により国民のコロナに対する対応改善やインバウンド消費拡大が期待されていること等により、移動や接触を伴う経済活動に関連する物品賃貸の増加が寄与している可能性が推察される。
  • 想定為替レートの修正度合いがわかる12月日銀短観の業種別収益計画(12月14日公表)も今期業績見通しを読み解く手がかりとして注目したい。
目次

売上高・経常利益とも計画上方修正

12月12日に公表された2022年10-12月期法人企業景気予測調査は、今年11月下旬にかけて資本金1千万円以上の法人企業に対して行った景気予測調査であり、今期の業種別企業業績計画を予想するための先行指標として注目される。

そこで本稿では、来年1月下旬からの四半期決算発表で、今年度の企業業績計画の上方修正が見込まれる業種を予想してみたい。

下図は、法人企業景気予測調査の調査対象企業の各調査時期における売上高と経常利益計画の今年度見通しの前回からの修正度合いを見たものである。まず売上高を見ると、製造業・非製造業とも増収率が上方修正となっている。このことから、四半期決算でも今期の売上高計画が上方修正される業種には注目が集まるものと推察される。

一方の経常利益は、製造業・非製造業とも上方修正となっているが、予想以上の円安の進展などにより、製造業は増益計画に修正されている。このことから、1月下旬からの四半期決算発表では、製造業を中心に今年度利益計画の上方修正が期待される中、非製造業での上方修正は小幅にとどまるものと推察される。

図表1
図表1

良い意味での増収率大幅上方修正は「娯楽」のみ

以下では、1月下旬からの四半期決算で、今期売上高計画で上方修正が予想される業種を見通してみたい。下表は業種別売上高計画を前年比と前回調査からの修正率で比較したものである。

図表2
図表2

結果を見ると、22年度は「鉱、採石、砂利採取」以外の全業種で増収計画となっている姿は前回と変わっていない。こうした中で、前年比の上方修正率が高い業種は「石油・石炭製品」「電気・ガス・水道」「娯楽」「農林水産」であり、特に「石油・石炭製品」では+20ポイント以上の上方修正率となっている。

「娯楽業」については、各種観光支援策や水際対策の緩和等が進んでおり、移動や接触を伴う経済活動が正常化に向かう動きが織り込まれている可能性が推察される。

一方、「石油・石炭製品」や「電気・ガス・水道」「農林水産」については、次に見る経常利益計画では大幅減益もしくは赤字計画になっていることからすれば、想定以上の円安が進展したことなどに伴い化石燃料や仕入れ価格の水準がさらに引きあがったことによる価格転嫁の影響が大きいことが推察される。

「自動車」「鉄鋼」「その他物品賃貸」等が増益率大幅上方修正

続いて、経常利益計画から増益率の上方修正が期待される業種を見通してみよう。結果を見ると、多くの業種で減益計画となっており、これは国際商品市況価格高騰等に伴うコスト増が主因と推察される。こうした中、増益率の上方修正が目立つ業種は「自動車」「鉄鋼」「その他物品賃貸」「その他輸送機械」「電気機械」等であり、いずれも二桁を大きく上回る上方修正率となっている。

図表3
図表3

中でも「自動車」や「鉄鋼」「その他輸送機械」「電気機械」については、代表的な輸出関連業種であるため。この3か月間で想定以上に円安が進んだことで利益が上振れしたことに加えて、想定為替レートが円安方向に修正された可能性も推察される。加えて、自動車や電気機械などでは半導体供給の改善効果も寄与しているものと思われる。

一方、「その他物品賃貸」も大幅増益計画に上方修正されている。ここに含まれるのは、映画・演劇用品賃貸業や貸衣装業などである。このため、各種観光支援策や水際対策緩和により国民のコロナに対する対応改善やインバウンド消費拡大が期待されていること等により、移動や接触を伴う経済活動に関連する物品賃貸の増加が寄与している可能性が推察される。

なお、日銀が12月14日に公表する12月短観の業種別収益計画(大企業)は法人企業景気予測調査に比べて聞き取りのタイミングが若干遅いことから、円安や観光支援策・水際対策緩和などの影響をより織り込んでいる可能性が高いため、12月短観における大企業の収益計画も四半期決算と今期業績見通しを読み解く手がかりとして注目したい。

永濱 利廣


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

永濱 利廣

ながはま としひろ

経済調査部 首席エコノミスト
担当: 内外経済市場長期予測、経済統計、マクロ経済分析

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