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2022.05.10
日本経済
新型コロナ(経済)
物価
ウクライナ問題
品目別データにみる今回の物価上昇の特徴
~食料・エネルギーのほかに何が上がっているのか?~
星野 卓也
- 要旨
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- 4月の都区部CPIの内容をみると、食料・エネルギー以外(米国型コアの品目)の上昇寄与度上位品目には宿泊料などのサービス、電気冷蔵庫などの家電製品が含まれており、世界的なサプライチェーン停滞や国内の人手不足といった要因が国内の物価にも影響していることが垣間見える。
- 今回の物価上昇は、資源価格上昇で多くが説明できた2008年の物価上昇とはやや様相が異なるようだ。賃金全般の伸び悩みの中で食料・エネルギー以外の物価上昇は限定的、との見方がメインシナリオではあるが、複数要因が重なることで上昇率が高まるリスクに気を払いたい。
食料・エネルギー以外の上昇品目は?
6日に4月の東京都区部消費者物価が公表され、総合指数は前年比+2.5%、生鮮食品を除くコア指数は+1.9%の上昇となった。資料1は4月の都区部CPIの前年比寄与度分解を行った図である。4月は携帯電話料金値下げのマイナス寄与が剥落したことのほかは、エネルギーや食品価格の上昇で物価上昇のほとんどが説明される形になっている。一方で、食料(酒類除く)・エネルギー除く指数(米国型コア)の前年比伸び率は4月+0.3%の上昇、前月比でも+0.4%と上昇しており足元の基調は上向きつつある。
資料2では、今回の物価上昇の特徴を推し量るために、この米国型コア指数の品目について前年比寄与度の上位25品目をまとめてみた。原油をはじめとした資源価格の上昇が顕著だった2008年についても同様に上位項目をまとめている。
今回は資源価格以外の要因も
2008年9月の米国型コア指数対象品目における上昇寄与品目をみていくと、外国パック旅行や航空運賃、タクシー代といった燃料費高騰が波及したとみられる品目が上位に並ぶ。ペットフードや衣料品、シャンプーも原材料価格の上昇が波及したとみられる品目である。米国型コア指数品目の中においても“資源価格上昇”の川下価格への転嫁、と考えられる品目が目立つのが特徴である。
それに対して、2022年4月の上昇寄与の上位には、宿泊代や講習料(水泳)、屋根修理費・自動車整備費1 、エステティック料金といったサービスが含まれる。資源価格の上昇も影響していようが、スポーツインストラクターや自動車整備工の給与はコロナ前から人手不足に伴って上昇しており、そうした傾向が続いていることが価格にも反映されていると考えられる。宿泊代の上昇はコロナ後のリバウンド需要を映したものでもあろう。また、4月の上昇品目には家電や家具も含まれている。原油高による輸送コストの上昇のほか、半導体不足などの世界のサプライチェーン影響も効いていると考えられる。
今後の米国型コアの動向・内容が重要に
アメリカでは、食料品やエネルギー価格の上昇に加えて、サプライチェーンの停滞や脱コロナに伴う需要の急回復、離職率の急増や労働供給の回復の遅れからくる人手不足と賃金上昇が相まって、物価全般が上昇している。日本ではコロナ期を通じて雇用調整助成金をはじめとした「雇用維持」重視の政策が行われたため、労働供給の減少は海外に比べて抑制されている。昨年の緊急事態宣言明けの消費環境からはリベンジ消費も局所的なものにとどまる可能性が高いとみられ2 、アメリカのような極端な物価上昇が日本で起こる可能性は低いだろう。
一方で、現在の日本の物価上昇も内容を見ると、サプライチェーン影響、資材・人手不足、といっ要因が垣間見えるものとなっており、世界で起きているインフレ要因と日本経済が無縁でいるわけではない。基本的に広範な賃金上昇が伴わない物価上昇に持続性はない、というのがセオリーではあるが、コロナ期を通じた消費の手控えで家計には強制貯蓄が積み上がっている。これが一時的に家計の物価上昇に対する耐性としての役割を果たすことも考えられる。今後の日本のCPIにおいて、食料・エネルギーの上昇のほか、これらを除いた米国型コア指数がどれだけ上昇するか、その内容に資源高騰以外の要因がどれだけうかがえるか、といった点にも注視が必要であろう。
1 2021年10月に車検更新にかかる法定手数料が引き上げられたことも影響。
2 Economic Trends「年末消費の動向にみる今後のリベンジ消費の形」(2022年2月8日発行)「https://www.dlri.co.jp/report/macro/181812.html」もご参照ください。
星野 卓也
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 星野 卓也
ほしの たくや
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: 日本経済、財政、社会保障、労働諸制度の分析、予測
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