日本株 中国ロックダウン解除に期待

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月28,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月125程度で推移するだろう。
  • 日銀は、現在のYCCを少なくとも2023年4月までは維持するだろう。
  • FEDは、2022年は毎FOMCで利上げを実施するだろう。
目次

金融市場

  • 前日の米国株は大幅下落。NYダウは▲2.0%、S&P500は▲3.2%、NASDAQは▲4.3%で引け。VIXは34.80へと上昇。
  • 米金利はブル・スティープ化。債券市場の予想インフレ率(10年BEI)は2.742%(▲12.2bp)へと低下。実質金利は+0.287%(+2.6bp)へと上昇。
  • 為替(G10)はUSDとJPYが堅調。USD/JPYは130前半で推移。コモディティはWTI原油が103.1㌦(▲6.7㌦)へと低下。銅は9237.5㌦(▲177.0㌦)へと低下。金は1858.6㌦(▲24.2㌦)へと低下。

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 予想インフレ率(10年)
米国 予想インフレ率(10年)

米国 実質金利(10年)
米国 実質金利(10年)

注目点

  • Fedの金融引き締めが金融市場を直撃。米国株の年初来パフォーマンスはS&P500が▲16.3%、NASDAQが▲25.7%と下落が鮮明。昨年9月時点でほとんど意識されていなかった利上げが現実のものとなり、年末年始に恒例の「仰天予想」にすら登場しなかった10回相当(25bp)の利上げが金利先物に織り込まれるなど、短期間に金融政策のコンセンサスが激変したことで投資環境が悪化している。2021年9月FOMC(21-22日開催)で示されたドットチャートは2022年の利上げ回数が中央値で0.5回分、当時の2年金利は0.3%を下回って推移していた。通常はおカネの逃避先として最上位に位置づけられる米国債は、日増しに高まる利上げ観測に晒され、さながらリスク性資産のような扱いに成り下がっており安全資産としての性格を失いつつある。逃げ場を失ったおカネはコモディティや暗号資産にも流れず、キャッシュに戻っている。

  • こうした構図はFedが金融引き締めの手を緩める、具体的には利上げ幅を25bpに戻すまで続くと予想される。もっとも、そうした潮目の変化が直ちに訪れる気配はない。サプライチェーン問題や予想インフレ率(10年BEI)など、インフレ関連指標にピークアウトの兆候が散見されているとはいえ、6月と7月FOMCにおける50bpの利上げ実施が広く予想され、FF金利先物は9月も50bpの利上げが意識されている状況にある。当面は引き締め警戒感が強いままだろう。

  • 金融市場の重苦しい雰囲気が変わるきっかけとして中国経済の好転が考えられる。不可解なほど厳格なロックダウン(上海)によって中国経済は停滞を強いられており、9日に発表された4月の貿易統計では輸入の前年比伸び率がゼロになるなど貿易量の縮小が明らかになった。先立って発表されていたPMI(製造業、非製造業)が落ち込んでいたことから驚きは小さかったが、改めてゼロコロナ政策の経済的破壊力を浮き彫りにした。その他では4月の自動車販売台数が「半減」と伝わっている(公式データは11日発表)。

  • 一方で中国の政策当局は金融緩和によって実体経済を下支えする構えをみせており、こうした政策効果はロックダウン解除後に発現が期待される。事実上の政策金利に位置付けられている1年物ローンプライムレートは4月も据え置かれ3.7%とされたが、預金準備率の段階的引き下げは継続しており、そうした下で当局の要請もあり銀行の融資基準は緩和し、貸出態度を示す融資承認DIは54.3へと水準を切り上げている。

中国 預金準備率(大手行)
中国 預金準備率(大手行)

中国 預金準備率(大手行)
中国 預金準備率(大手行)

中国 融資承認DI
中国 融資承認DI

  • 中国のマネー関連統計(マネーストック、社会融資総量)は日本株と一定の連動性を有する。当局の政策態度が緩和方向に傾き、資金調達が容易になると、インフラ投資の増加を通じて製造業の生産活動が上向くことで日本企業(株式)に恩恵が及ぶと考えられる。その点、日本株に6~12ヶ月程度の先行性を有するクレジットインパルス(≒新規与信GDP比、前年差)が上向きに転じていることはポジティブ。日本株の先行指標として、先を読み過ぎている嫌いはあるものの、いざロックダウンが解除されれば、中国経済の正常化期待が芽生え、株式市場の空気も好転する可能性がある。

日経平均・中国クレジットインパルス
日経平均・中国クレジットインパルス

藤代 宏一


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