1原油価格下落の季節到来 2予想以上にタカ派傾斜するFED

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月31,500程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月113程度で推移するだろう。
  • 日銀は、現在のYCCを長期にわたって維持するだろう。
  • FEDは、2022年央に資産購入を終了、22年終盤に利上げを開始するだろう。
目次

金融市場

  • 前日の米国株はまちまち。NYダウは▲0.7%、S&P500は▲0.1%、NASDAQは+0.4%で引け。VIXは17.90へと上昇。
  • 米金利カーブはツイスト・フラット化。30年金利は2%を明確に割り込んだ。債券市場の予想インフレ率(10年BEI)は2.654%(▲6.3bp)へと低下。実質金利は▲1.121%(+2.9bp)へと上昇。
  • 為替(G10通貨)はUSDが堅調。USD/JPYは114近傍へと下落。コモディティはWTI原油が76.1㌦(▲2.9㌦)へと低下。銅は9646.5㌦(+205.0㌦)へと上昇。金は1851.6㌦(▲9.8㌦)へと低下。

米国 イールドカーブと米国 予想インフレ率(10年)と米国 実質金利(10年)
米国 イールドカーブと米国 予想インフレ率(10年)と米国 実質金利(10年)

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 予想インフレ率(10年)
米国 予想インフレ率(10年)

米国 実質金利(10年)
米国 実質金利(10年)

注目ポイント①

  • WTI原油価格(19日)は76.1ドルへと下落し3営業日連続で80ドルを割れた。足もと固有の要因としては、①主要国における石油の国家備蓄放出の可能性が意識されているほか、②ドル高の進行、③米シェール勢の再稼働が挙げられる。

  • このうち②について、足もとでドルインデックス(DXY)は96.0と2020年7月と同程度の水準へと上昇している。FEDの引き締め観測が高まる下でUSDが上昇するという素直な反応がみられており、これが原油価格下落の一因にみえる。③については米国の稼働リグ数が556基(石油:454基、ガス:102基)とパンデミック発生前の水準を大幅に下回るものの、原油価格が採算ラインとされる30ドル程度を遥かに上回る下で着実な増加傾向にある。パンデミック下で原油安に直面したシェール企業は、これまで財務体質の改善を優先し生産・投資に消極的であったが、そうした経営姿勢に変化の兆しがみられている。また11月は季節的に原油安となり易い時期であり、今年も例外ではないようにみえる。

WTI原油・米国稼動リグ数とWTI原油・DXYと米国 原油生産量とWTI原油価格の季節性
WTI原油・米国稼動リグ数とWTI原油・DXYと米国 原油生産量とWTI原油価格の季節性

WTI原油・米国稼動リグ数
WTI原油・米国稼動リグ数

WTI原油・DXY
WTI原油・DXY

米国 原油生産量
米国 原油生産量

WTI原油価格の季節性
WTI原油価格の季節性

注目ポイント②

  • FOMC参加者の中心的見通しは筆者の予想以上にタカ派色を強めている可能性がある。すなわち2022年6月の資産購入終了から半年程度の時間を置いて2022年終盤に初回利上げを実施するという引き締めスケジュールは前倒しのリスクに晒されている。11月FOMCで決定された毎月1200億ドルの資産購入ペースを8回にわたって減額し、2022年6月に資産購入を終了するという当初計画は早くも修正の機運が高まってきた。

  • 直近のクラリダ副議長(※2022年1月末に任期満了)とウォーラー理事の発言に鑑みると、テーパリングの加速はあながち否定できない情勢。19日にクラリダ副議長は労働市場の回復を評価したうえで「テーパリングのペース加速を巡り討議することが極めて適切となる可能性がある」とした。また、ウォーラー理事は同じく経済全般の改善を評価したうえで「今後のデータに基づき、より早いテーパリングに移行する必要があるかもしれないと考えている」として、また「来年1月にテーパリングのペースを倍増させ、4月に完了させた上で、第2・四半期に利上げに着手する」案に賛成した。16日にはブラード・セントルイス連銀総裁がテーパリングのペースを毎月300億ドルに加速し2022年3月までに資産購入を終了する案を示していたが、これまでタカ派色がそれほど強くなかった中枢メンバーもそうした考えを有していたことが明らかになった形だ。

  • 12月FOMC(14~15日)では2022年を中心にドットチャート中央値の上方シフト(9月の0.5回→1.5回程度?)が予想されるほか、テーパリング加速について何らかの情報発信があるかもしれない。声明文に「加速」が明示される可能性は低いと思われるが、記者会見において質問が集中するのは必至でパウエル議長が「テーパリング加速を議論した」ことを認める可能性はある。FOMCの3週間後に発表される議事要旨では、テーパリング加速を支持した参加者の「数」が注目を浴びるだろう。

市場参加者が織り込む利上げ
市場参加者が織り込む利上げ

藤代 宏一


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。