ハートランド・リムランドは、それぞれ20世紀初頭に提唱された有名な地政学の理論です。英国の地理学者・政治家マッキンダーが提唱したハートランド理論は、ユーラシア大陸の中心部（ハートランド）を最重要地域と位置づけ、この地域を支配する国が世界を支配する可能性が高いと論じました。一方、オランダ系米国人の地政学者スパイクマンが提唱したリムランド理論は、ハートランドを取り巻く周辺地域（リムランド）の地政学的重要性を強調し、これらの地域の安定が世界の平和に不可欠であるとしました。

2022年のウクライナ侵略は、リムランドに位置するウクライナが、ハートランド（ロシア）の勢力拡大の試みに直面していると解釈できます。この侵略は、リムランド理論が指摘する通り、周辺地域の安全保障がハートランドの野心によって直接的に脅かされること、そしてリムランド地域の国々の連携が地域の安定に極めて重要であることを浮き彫りにしました。

ウクライナ情勢は、20世紀初頭の地政学的な理論が現代の国際政治においても重要な洞察を提供していることを示しています。言うまでもなく、ロシアの行為はウクライナの主権を踏みにじる「力による現状変更」の試みであり、地政学的な理論を持って正当化できるものではありません。