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【1分解説】 患者体験価値(PX:Patient Experience)とは?

田村 洸樹

  音声解説

PXとは、Patient(患者)とExperience(体験価値)を掛け合わせた造語で、もともとマーケティング分野などで広く使われている「CX(Customer Experience)」を医療分野に転用した言葉です。CXは、顧客が、企業の提供する商品・サービスを通じて得られる体験価値を重視する考え方です。PXは、患者が、医療機関の提供するケア・サービスを通じて得られる体験価値を重視する考え方で、「どんな医療が提供されたか」ではなく「患者がどう感じたか」に焦点が当てられるのが特徴です。

例えば、OECD(経済協力開発機構)は、PX指標のひとつとして、「患者の尊厳の保持」をあげています。医師から礼儀正しく敬意を持って扱われたと感じた精神疾患を有する入院患者の割合は、OECD加盟国の中でもニュージーランドの49%からポルトガルの100%まで格差が存在します(資料)。既存の診療報酬制度は提供された医療で価値を評価する仕組みのため、PXの考え方は既存の医療評価システムを補完する上で重要な役割を果たす可能性があります。

公衆衛生の改善や医療技術の進歩によって、患者が医療に求める価値は量から質へと変化しています。患者の生活の質(QOL)がどの程度向上したかを評価する指標のひとつであるPXの重要性が、今後ますます重要視されていくでしょう。

図表1
図表1

(出典)OECD Health at a Glance 2023より筆者作成

https://www.oecd.org/health/health-at-a-glance/

この解説は2024年2月時点の情報に基づいたものです。

田村 洸樹


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