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【1分解説】 生活賃金(Living wage)とは?

田村 洸樹

  音声解説

生活賃金(Living wage)とは、労働者とその家族が十分な生活水準を維持するために必要な賃金を指します。国際的に合意された明確な定義や基準が存在せず、場所や時代等の条件によって多様な考えがあり得る「解釈の余地が大きい言葉」と言えるでしょう。

よく似た言葉に、「最低賃金(Minimum wage)」があります。最低賃金は、労働者に支払われるべき賃金の最低額であり、各国政府等によって法律等で明確に定められています。解釈の余地(不確実性)が無く、法的根拠等に基づいた明確な定義が存在するという点で、生活賃金との違いに注意が必要です。

国連の「世界人権宣言」は、生活賃金を基本的人権のひとつとしています。そのため、世界的な格差拡大・物価高により生活費(Living Cost)が上昇する中、人間の尊厳を守る上で「生活賃金」の重要性が改めて注目されています。

近年、人権デューデリジェンスの実施を企業に求める機運が世界的に高まっており、企業の支払う賃金が「最低賃金」を満たすだけでなく、「生活賃金」も満たすことが求められる可能性があります。日本企業も、欧州で活発に議論されているデューデリジェンス義務化の動向や、先進的な取組を行っている企業の事例等を参考に、国際的な議論の潮流を捉えることが重要です。

この解説は2023年12月時点の情報に基づいたものです。

田村 洸樹


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