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【1分解説】 気候オーバーシュート(Climate Overshoot)とは?

田村 洸樹

  音声解説

オーバーシュート(Overshoot)には、英語で「行き過ぎる・通り過ぎる」という意味があります。例えば、暖房器具を使って室内の気温を短時間で上昇させようとした場合、目標温度に達した段階で瞬時に変化を止めることができないため、一時的に閾値を超過してしまう状態などが該当します。株価、感染者数、飛行機の着陸時の停止位置など、様々な場面で使われる一般的な用語です。

気候オーバーシュート(Climate Overshoot)とは、気候に関する指標がオーバーシュートしている状態を指します。パリ協定が「世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える」ことを目標に掲げていることから、一般的に「平均気温の1.5℃上昇」が指標として採用されています。

1.5℃の閾値を超えると、北極圏の永久凍土融解や、熱帯サンゴ礁の死滅等、地球上に不可逆的な(元に戻ることができない)影響を及ぼす可能性があると指摘されています。様々な国際機関や団体が1200を超える気候シナリオを公開していますが、そのうち9割以上のシナリオが今世紀中の気候オーバーシュートを前提としています。自社のトランジション計画やネットゼロ目標を策定・検証する際、用いるシナリオが気候オーバーシュートを前提としているかに留意が必要です。

この解説は2023年11月時点の情報に基づいたものです。

田村 洸樹


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