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【1分解説】ブータンの国民総幸福量(GNH)とは?

村上 隆晃

  音声解説

ブータンは国民が実感する幸福度を表す「国民総幸福量(Gross National Happiness、以下「GNH」)」を国の政策の中心に置くことで知られています。GNHは1972年、第4代のジグミ・シンゲ国王によって提唱され、「国民の幸福は経済成長よりも重要」との考えのもと生まれました。

GNHは、①持続可能で公平な社会経済開発、②環境保護、③文化の推進、④良き統治の4つの柱から成り立っています(資料)。具体的には、心理的幸福、健康、教育など9分野からなるGNH指標について、アンケート調査を実施して測定しています。国はGNH向上のために努力することが憲法に定められており、GNH委員会と呼ばれる組織が政策を立案、調整する重要な役割を担っています。

ブータンはGNHを政策の中核として、人々の幸福や環境保全を重視しています。例として、ブータンは世界でも数少ない「カーボンネガティブ」(温暖化ガスの排出量が吸収量を下回る)を実現している国であり、開発の際には国民の福祉を最優先に考慮しています。

GNHは単なる経済指標以上のものを国として重視すべきだと示唆するブータンの政治哲学であり、この概念は日本人にとっても真の「豊かさ」や「良い生活」とは何かを改めて考えさせてくれるものです。

資料 GNHの4本柱と9分野の指標
資料 GNHの4本柱と9分野の指標

この解説は2023年9月時点の情報に基づいたものです。

村上 隆晃


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