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【1分解説】経済的威圧とは?

谷口 智明

  音声解説

経済的威圧(economic coercion)とは、ある国が他国に対して、重要物資の輸出制限、関税引上げ、検疫措置、通関拒否等の経済的圧力を加えることで、他国の政策に影響を及ぼそうとする行為です。かつて日米貿易摩擦の際に米国の通商交渉として使われたこともあります。

近年、国際社会はグローバル化や相互依存が進む中で、安定や成長を享受してきましたが、新型コロナウイルス感染症の流行や国家間の覇権争いといった国際情勢の変化により、経済的な相互依存関係を悪用した経済的威圧が外交・安全保障上の武器として使われるようになりました。

そこで、G7広島サミット(2023年5月)の首脳声明では、中国等を念頭に経済的威圧に対する深刻な懸念が表明され、「経済的威圧に対する共同の評価、準備、抑止及び対応を強化するため、『経済的威圧に対する調整プラットフォーム』を立ち上げ、連携を強化し」「G7以外のパートナーとの協力を更に促進していく」ことを確認しました。

企業としても重要物資の特定国への依存を減らすとともに、同盟国・同志国等との協力関係を踏まえて、サプライチェーンを強靭化する必要があります(資料)。またこうした行為に及びにくい国際環境づくりも重要であり、G7で提唱された調整プラットフォームの早期立ち上げとともに、欧米では対抗のための制度整備も進められています。

資料 中重希土類のサプライチェーンにおけるリスク
資料 中重希土類のサプライチェーンにおけるリスク

この解説は2023年8月時点の情報に基づいたものです。

谷口 智明


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