急減した小学生の自然・文化的体験

~体験の機会を広げ、学びにつなげる工夫を~

北村 安樹子

目次

1.急減した小学生の学校行事以外での自然・文化的体験

夏休みを迎え、旅行・外出やレジャーの予定を楽しみにする子どもも多いだろう。

厚生労働省は平成22年生まれの子どもを対象に追跡調査を行っており、そこでは、親が直近1年間に子どもに体験させた自然体験(「キャンプ、登山、川遊び、釣り」「海水浴、マリンスポーツ」「ウインタースポーツ」)や社会体験(「農業体験」「職業体験」「ボランティア」)、文化的体験(「動植物園・水族館・博物館・美術館見学」「音楽・演劇・古典芸能鑑賞または体験」「スポーツ観戦」)の実態をたずねている。

それによると、これらの体験の多くは、どの学年に行われた結果でも、直近1年間に経験する機会がなかった子どもの方が多い(図表1)。学校行事やふだんの遊び以外で、親が小学生の子どもにこれらを経験させる機会は、毎年のようにあるわけではないことがわかる。

図表1
図表1

ただし、キャンプ、海水浴などの自然体験や、動植物園・博物館見学などの文化的体験では、低・中学年までは直近1年間での経験者が半数を上回っていた。たとえば、4年生の時点では「キャンプ、登山、川遊び、釣り」と「海水浴、マリンスポーツ」では6割前後、「動植物園・水族館・博物館・美術館見学」では約8割に体験機会があった。

しかしながら、これらも5年生時には体験した子どもは大きく減少して、いずれも半数を下回った。約10歳年上にあたる平成13年生まれの子どもと比べても、平成22年生まれの子どもが同年齢の時期に体験した割合は、直近数年で大きく減少している。調査項目にコロナ禍の影響を直接たずねる設問は含まれていないが、人々が遠方への旅行・外出を自粛したり、各種施設が閉鎖されるなど、コロナ禍の影響も大きかったようだ。

2.自然・文化に親しむ体験が学びへの関心を強める

子どもにとって、自然や文化などに親しむ機会は、実生活にも役立つ自律性や実践的な知識・技術を身につけたり、科学・歴史や文化・芸術などへの関心を深める学びの機会にもなる。興味をもつ活動を体験したり、関心のあるテーマにかかわる知識・情報や技術に直接ふれる経験は、家庭や学校で資料等を通じ間接的に得る知識・情報と重なることで、学びへの関心を強めるだろう。

ただ、小学校高学年のこの時期に子どもがどのような体験に関心をもち、実際にどのような機会を経験するのかには、家庭の教育方針やライフスタイル、経済状況などによる違いも大きい。猛暑が続くこの夏、自然・文化に親しむ機会がある子どももいる一方、習い事などの活動に打ち込んだり、家族や友人と過ごす何気ない時間や1人で過ごす自由な時間を楽しみにする子どももいるだろう。しかしながら、自然や文化にかかわる知識・関心や学習のモチベーションには、多様な実体験を通じた学びの機会も大切だ。子どもが身近な場で自然・文化などに親しむ機会を広げる工夫が重要である。

たとえば、子ども自身に関心をもつ活動や行ってみたい場所・施設があれば、情報収集を行ったり、家族や友人と話してみることは、将来の体験を豊かなものにする。この年齢の子どもが自身の興味・関心を体験的な学びの機会に結びつけるには、体験の機会があるかどうかだけでなく、子ども自身の興味・関心や主体的な行動を見守り、引き出す、家庭でのコミュニケーションも大切である。

北村 安樹子


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北村 安樹子

きたむら あきこ

ライフデザイン研究部 副主任研究員
専⾨分野: 家族、ライフコース

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