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【1分解説】Integrity Matters(ネットゼロの信頼性確保)とは?

田村 洸樹

  音声解説

「Integrity Matters」とは、国連ハイレベル専門家グループが2022年11月に発表した報告書のタイトルです。直訳すると「誠実かどうかが問題だ」となるように、報告書は、企業やNGO等の非国家主体による「ネットゼロ宣言(温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするという宣言)」の信頼性・透明性を確保するために、国際的な定義の統一やルール整備の必要性を指摘しています。

報告書には、例えば、排出権取引(カーボンクレジット)を使った自社バリューチェーン内での排出量相殺(オフセット)の禁止、企業の石炭火力発電所の操業禁止、業界団体等を通じた気候変動対策への反対活動等の禁止等の提言が含まれています。

2023年6月、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局は「Integrity Matters」の提言内容を社会実装するための枠組と導入計画案を発表しました。導入計画案には、非国家主体に対して「ネットゼロ宣言」や「移行計画(トランジションプラン)」を専用サイト(Global Climate Action Portal)に登録することや、その進捗を毎年報告すること等が含まれています。

2023年11月に開催されるCOP28のグローバル・ストックテイク(GST)に向けて、ネットゼロ宣言の信頼性と透明性に関する国際ルールが収斂していくのかに注目が集まりそうです。

この解説は2023年7月時点の情報に基づいたものです。

田村 洸樹


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