ペットとの暮らしの備え

~「お金」「健康」「つながり」という視点の重要性~

北村 安樹子

目次

1.飼い主の約9割が「ペットは家族のような存在」

当研究所が行った調査によると、「ペットは家族のような存在であると思う」と答えた人(「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」の合計割合、以下同様)は、飼い主の約9割に及ぶ(図表1)。

一方、ペットを飼っていない人でこのように答えた人は約4割にとどまっている。現在ペットを飼っていない人のなかには、ペットを飼った経験がある人や、これからペットを飼いたいと考えている人もいる。このため現在の飼育状況だけでこのような意識の違いを説明することはできないが、ペットを飼っている人の多くは、ペットを家族に近い存在だと感じている。

図表1
図表1

2.ペットを飼うことの効用とペットの健康への関心

ペットを飼っている人は、ペットからさまざまな効用を得ている。精神面の安らぎはその1つだろう。先の調査でも、ペットを飼っている人の多くが、ペットの存在は自身や家族の健康面にさまざまな好影響を与えていると感じており、ペットがいることは「自身の健康によい」、「同居する家族の健康によい」と答えた人はいずれも9割近くを占める(図表2)。

図表2
図表2

また、この調査で「ペットがいることは、自分の健康によい」と感じている人は、自身が健康な人だけでなく、自分の健康状態があまりよくないと感じている人にも確認される(図表省略)。自身や家族が心身に不調を抱えている場合を含めて、ペットがいることで、本人やその家族が心身の健康への好影響を感じているようだ。

一方、ペットのことを家族のように感じている人や、高齢になったペットと暮らす人も多いなかで、病気予防や食事、介護への備えなど、ペットの健康や医療・介護に関心をもつ飼い主も多い。家族に行うのと同じように、ペットの健康に気を配り必要なケアを行って、そのために必要となる費用を拠出する人も多いのだろう。

3.ペットとの暮らしへの備えには「健康」「つながり」の視点も重要に

一方、そのような費用がどのくらいかかるかわからなかったり、仕事をもちながら世話することへの不安から、ペットとの暮らしをあきらめている人もいるだろう。ペットの種類にもよるが、費用に関しては、ペットを迎える際に必要となる備品などの初期費用に加え、継続的にかかる消耗品費や食費・光熱費、けがや病気などにかかる治療費やワクチンなどの予防費用がある。

金額はペットの種類やサイズなどによって異なるものの、たとえばペット保険会社が契約者に行ったアンケート調査(注1)によると、1頭あたりの年間支出は、犬が約35.7万円、猫が16.1万円、うさぎが14.4万円、その他の小動物が約10.7万円というデータもある。これらにより、想定される寿命等に応じて、生涯にわたって必要となる費用の概算がわかる。具体的な金額を知ることは、自身の経済状況やライフスタイルが許す範囲でペットの種類を選択したり、ペットとの暮らしをより慎重に検討することにつながるし、すでにペットを飼っている人が、将来必要になる費用を想定することもできる。

また、ペットとの暮らしが長期にわたるなかで、ペットのけがや病気を経験したり、仕事や用事、体調不良などでペットの世話ができない事態に直面することもある。ペットの健康や治療を相談できる専門家や、世話や見守りを頼める人、安心して託せる預け先をもつことは、飼い主の安心につながる。それらのサービスを利用するために必要なお金を備えることも大切だが、信頼できる専門家や事業者などとのつながりも、大切な備えといえる。

このような視点でみると、ペットとの暮らしは、飼い主自身の「健康」や他者との「つながり」という人生資産にも大きくかかわってくる。ペットを家族のように思う人は多く、家族のライフプランを考えるのと同じようにペットの成長や行く末を考える人もいるだろう。そのなかで「お金」や「健康」の面とともに、ペットを介した周囲の人や社会とのつながりを大切にすることも、ペットとの暮らしを豊かなものにしていくのではないだろうか。

【注釈】

  1. アニコム損害保険株式会社『2022最新版ペットにかける年間支出調査』2023年3月3日より。同社のペット保険契約者へのアンケート調査に基づく2022年の1年間にペット1頭あたりにかけた年間支出

【参考文献】

  1. 第一生命経済研究所「人生100年時代の「幸せ戦略」」東洋経済新報社、2019年11月
  2. 第一生命経済研究所「「幸せ」視点のライフデザイン」東洋経済新報社、2021年10月

北村 安樹子


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

北村 安樹子

きたむら あきこ

ライフデザイン研究部 副主任研究員
専⾨分野: 家族、ライフコース

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