暮らしの視点(29):少孫化時代の子・孫への支援

~子世帯の自立を見据えた支援の重要性~

北村 安樹子

目次

1.祖父母から子・孫への主な支援

祖父母による子や孫への支援には様々なものがあり、次のように整理できる(図表1)。

1つ目は「金銭」で、ふだんのおこづかいやライフイベント時のお祝い、日常生活費や仕送り、教育・住宅・結婚資金の贈与などが該当する。2つ目は「物資・情報」で、これには生活用品、家や家具、自動車など金銭以外の物資・環境や、祖父母がもつ知識・情報、スキルや人間関係の提供などが含まれる。3つ目は「ケア・手助け」で、幼い孫やその兄弟姉妹の世話・見守りや体調不良時の手助けなどが該当する。4つ目は「精神面」であり、子や孫の相談相手になることなどがあてはまるだろう。

このような支援を子や孫に行ったり、祖父母から受けた経験をもつ人は多いのではないだろうか。

図表1
図表1

2.子世帯家計への支援

金銭や物資に関しては、日常生活費や仕送りのように継続的に行われるものと、おこづかいやお祝いのように、交流時や季節行事、ライフイベントに合わせてその都度行われるものがある。これらのうち、主に仕送りのような継続的なものが子世帯家計への支援にあたるが、おこづかいやライフイベントで贈るお祝いも、時に子世帯家計への支援を目的に行われることがある。

また、祖父母が食品や生活用品を提供すること、祖父母の持ち物や自宅を利用させることも、子世帯家計への支援にあたる。

金銭や物資の支援は多様な形で行われるため、どのような支援がどの程度行われているか、その実態をつかむことは難しい。ただ、子世帯家計への支援と位置付けるにはやや違和感があるが、孫へのおこづかいやプレゼントに関しては、少子化・少孫化の影響もあって、ふだんから交流がある場合を中心に、頻回に行われているようだ。

一方、そのような日常的な支援に比べると少ないが、教育費など使途を限定した資金援助に対する非課税措置を利用して、一括してまとまった額の金銭贈与が行われるケースもある。このうち下記の信託契約を利用したものに関しては、利用状況のデータが公表されており、制度開始以来、累計ベースの設定額は拡大している(図表2)。

図表2
図表2

3.情報、ケア・手助けや精神面での支援

情報提供を通じた支援に関しては、祖父母の知識・経験や人縁が、子・孫の教育などに役立つ。祖父母がもつ知識・経験を学んだり、祖父母の話から年長世代の生きた時代への理解が深まること、祖父母の紹介やつながりで、他者と新たな関係が生まれることもある。

また、ケア・手助けの面では、祖父母が直接行う世話のほか、子や孫の相談相手になるなど精神面での支援がある。この傾向は、出産・子育て期の有配偶女性にとって「祖父母(親)」が重要なサポート源であることを示す調査結果からもうかがえる(図表3)。子どものいる有配偶女性が、第2子の出産時の第1子の世話や、出産・育児で困ったときの最も重要な頼り先として「親」を挙げた割合は、「夫」を含む他の選択肢を上回っている。夫の育児参加や、子育て支援制度の充実、保育所などの施設利用が進んできたなかでも、祖父母による子育ての直接的な手助けは、出産・子育て期の子や孫に対する重要な支援だといえる(注1)。

図表3
図表3

4.少孫化時代の子・孫への支援~子世帯の自立を見据えた支援の重要性~

当然ながら、祖父母が行う子・孫への支援には個人差が大きい。支援の意向や必要性がないケースもある一方で、支援を行いたくても行えない人もいる。

たとえば金銭・物資の支援に関しては、自身の生活資金の見通しに不安を感じながら支援を続けている祖父母や、どの程度の支援を行うのがよいか迷いを感じている祖父母もいるだろう。その場合は、自身の収入・資産について家計の専門家に相談することが、子世帯の自立を見据えた支援を考えたり、自身の家計への安心感を得ることにつながるのではないだろうか。

一方、ケア・手助けに関しては、娘をもつ祖母の場合には特に、直接の手助けを行いたいと考える人が多い。子世帯にも、信頼や安心感などの点で、祖父母の支援に頼りたいと考える人が多いだろう。ただ、仕事や健康上の理由など、何らかの事情で祖父母が支援できなくなる事態は常に起こりうる。祖父母としては、子ども夫婦が家事や子育てで協力し合うことを尊重しつつ、必要に応じて助けるなど、子世帯の自立を見据えた支援も大切になるのではないだろうか。

【注釈】

  1. 祖父母によるケア・手助けが、幼い子どもがいる時期の親にとって重要なサポート源となってきたことを示すデータは他にもある。同研究所の別の調査では、子どもが3歳になるまでに受けた祖父母からの子育ての手助けに関し、現状では2005年以降に第1子を出生した母親の約6割が自身または配偶者の母親から「日常的に」あるいは「ひんぱんに」手助けを受けたと答えている(国立社会保障・人口問題研究所「第16回出生動向基本調査 結果の概要」2022年9月、76頁。選択肢にはほかに「ときどきあった」「ほとんどなかった」「すでに亡くなっていた」がある)。
  2. 一般社団法人信託協会ウェブサイト「信託の受託概況(2022年9月末現在)」「信託の受託概況(2015年9月末現在)」、文部科学省ウェブサイト「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」、内閣府子ども・子育て本部ウェブサイト「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」、一般社団法人全国銀行協会ウェブサイト「教えて!くらしと銀行 Q.孫への教育資金援助、注意すべき点はありますか?」を参照。

北村 安樹子


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北村 安樹子

きたむら あきこ

ライフデザイン研究部 副主任研究員
専⾨分野: 家族、ライフコース

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