「インド太平洋（Indo-Pacific）」とは、インド洋と太平洋一帯に広がる地域を指します。これには、ASEAN、太平洋島しょ国、中東、アフリカ、中南米等が含まれます。近年、グローバル・サウスと呼ばれる発展途上国（インド、トルコ、南アフリカ、ブラジル等）の台頭によって、国際的なパワーバランスが変化しており、インド太平洋地域の経済・安全保障上の重要性が増しています。

米国・日本政府は、これまでに「インド太平洋」に対するビジョンをそれぞれ発表しています。米国の「インド太平洋戦略（Indo-Pacific Strategy）」はインド太平洋地域における中国の影響力拡大に起因しており、中国の一帯一路に対抗する戦略と位置付けています。その一方で、日本の「自由で開かれたインド太平洋（FOIP）」構想は、誰も排除しない、陣営作りをしない、価値観を押しつけない「法の支配に基づく共存共栄」を掲げています。つまり「中国との協力を排除していない」点で米国と日本のインド太平洋地域に対するビジョン・スタンスは異なっています。

米・独・仏やEU・ASEAN等も、インド太平洋ビジョンを表明、もしくはその動きをみせています。多様性や包摂性を尊重し、対話を通じた対等なパートナーシップ構築を目指す日本のビジョンが実現できるのか、日本の調整力が試されています。