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【1分解説】10兆円ファンドとは?

谷口 智明

  音声解説

10兆円ファンドとは、世界トップレベルの研究水準を目指す大学を長期的・安定的に支援するために政府が創設した大学ファンド(基金)のことです。企業年金連合会に匹敵する規模の官製ファンドで、世界的にも類を見ません。近年、科学技術・イノベーションが国家間の覇権争いの中核となる中、相対的に低下している日本の研究⼒を強化することが背景にあります。

運用元本は、国の一般会計からの出資約1兆円と財政投融資からの借入金約9兆円で手当てされました。既に国立研究開発法人科学技術振興機構で運用を開始しており、ファンドの運用目標は年4.49%、2024年度から年間3,000億円を上限に運用益の配分を目指しています。

配分先は、文部科学大臣より「国際卓越研究大学」の認定を受けた大学となります。認定に際していくつかの要件をクリアする必要がありますが、10大学より申請があり、2023年度内に決まる予定です。認定されれば、1校あたり数百億円規模の支援を受けることができ、科学技術・イノベーションに関する研究環境の整備や優秀な若年研究者の育成等に向けて、大きな魅力となります。但し、2022年4月から9月までの運用収益率はマイナス3.67%、1,881億円の損失となりました。大学の研究力強化が運用次第という状況は心もとなく、長期的かつ安定的な運用益の確保が求められます。

この解説は2023年6月時点の情報に基づいたものです。

谷口 智明


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