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生成AIプラグインの衝撃

~ここまで来た!生成AIと連携するプラグインの新たな可能性~

柏村 祐

目次

1.プラグインの課題

生成AIの能力を向上させる仕組みとして、生成AIと連携するプラグインに注目が集まっている。プラグインとは、特定のソフトウェアの機能を拡張するための付加的なソフトウェアモジュールである。多くの場合、プラグインは、ソフトウェアが本来持っていない機能を追加する目的で使用される。名前が示す通り、プラグインは必要な場合に「プラグ(差し込み)」し、不必要な場合には削除することができる。

検索エンジンや文書、表計算ソフトウェアと連携するプラグインは存在するが、その性能を最大限発揮するためには、プラグインを操作するスキルやノウハウに習熟する必要があった。しかし、最近話題のChatGPTをはじめとする生成AIと連携するプラグインでは、対話形式でプラグインに指示を出すことが可能である。そのため、熟練したスキルやノウハウがない人でも、簡単で気軽に操作が行える。

ChatGPTをはじめとする生成AIに搭載されるプラグインは、ユーザーのニーズに応じた機能拡張が可能であり、その数は日々増加している。生成AIの利用者は、提供されるプラグインの中から自身のニーズや嗜好に合わせてプラグインをインストールし、その機能を自由に利用できる。

本レポートでは、AIプラグインについて概観し、その可能性について解説する。

2.生成AIと連携するプラグインの実態

生成AIと連携するプラグインは、すでに生成AIのメニューの中に搭載されている。たとえば、2023年5月下旬時点でChatGPTに搭載されているプラグインの数を確認したところ、その数は150を超えている。特に人気のあるプラグインメニューをみると、情報の整理・まとめに活用できるもの、旅行に活用できるもの、計算・数学・厳選された知識にアクセスできるもの、チャットで直接図を作成・編集できるものなど、幅広い機能が提供されている。利用者は、自分が使いたいプラグインのインストールボタンを押すことで、即時に利用を開始できる(図表1)。

図表1
図表1

以下では、「情報通信白書」に関する情報収集を担当するリサーチャーや、顧客チャットシステムの業務概要フローを作成するシステム開発者が、生成AIと連携するプラグインの活用場面を通じて、その性能を検証する様子を紹介する。

まず、情報収集を担当するリサーチャーが生成AIと連携するプラグインの活用場面について見ていく。たとえば、リサーチャーが令和4年度の「情報通信白書」を扱うとする。この白書は200ページ以上に及ぶため、要点をまとめるには、生成AIに対して「情報通信白書」のPDFを読み込ませ、「内容についての要点をまとめてください」と指示を出す。その結果、プラグインは自動的に起動し、生成AIが「情報通信白書」の要点をまとめ始める。従来、「情報通信白書」の内容を整理し要点をまとめるには、白書全体を通読し情報を整理する、という手間が必要だった。しかし、このプラグインを活用すれば、数秒で要点をまとめることが可能となる。プラグインは、「情報通信の現状と課題」、「情報通信政策の方向性」、「情報通信の未来像」、「情報通信政策の推進」の4つの要点を生成し、それぞれの解説を提供した。「情報通信の未来像」について詳しく知りたい場合は、「情報通信の未来像についてさらに要点をまとめてください」という指示を出すと、プラグインが再度起動し、AIは「情報通信の未来像」に関する要点をまとめる(図表2)。

また、プラグインはPDFだけでなく、ワード、エクセル、パワーポイント、ウェブといった各種情報を生成AIに読み込ませることが可能である。ユーザーが生成AIに指示を出せば、プラグインは自動起動し、情報の整理・要点のまとめを行う。

図表2
図表2

次に、システム開発者がAIと連携するプラグインを活用し、顧客チャットシステムの業務概要フローを生成する場面について見てみよう。ここで試みたのは、業務概要フローの作成をプラグインに委ねるという試みである。その結果、プラグインは顧客とチャットシステム、そして会社側の対応との関係性を明瞭に示したフロー図を生成した。さらに、この図は編集可能であり、情報の追加や修正も容易である(図表3)。

以上、プラグインの利用により、200ページ以上のPDFの内容分析をリサーチャーが容易にまとめることが可能であるという事例を示した。加えて、プラグインはシステム開発者が業務概要フローを図式化する例でみられる通り、業務フローを即座に視覚化する能力を持っていることが確認できる。

図表3
図表3

3.生成AIと連携するプラグインの可能性

AI技術の進化に伴うAIとプラグインの連携は、ユーザーエクスペリエンスを大幅に向上させる可能性がある。プラグインは特定の機能やサービスをAIに追加するツールであり、これによりAIはより多機能で柔軟なものへと変化する。

例として、ビジュアルエディタプラグインを使用すると、ユーザーはAIに視覚的な情報を提供し、それに基づいた出力を得ることができる。さらに、翻訳プラグインを使用すると、AIは複数の言語に対応でき、より広範囲なユーザーにサービスを提供できるようになる。

AIが単独で動作する場合、その機能は限定的であり、ユーザーのニーズに対応する能力が制約される。特定のタスクを達成するためには、ユーザーが複数のツールを切り替える必要があり、これはユーザーエクスペリエンスを低下させるおそれがある。さらに、AIが特定の機能をもたない場合、ユーザーは他のツールを探す必要があり、これは時間と労力を必要とする。

しかしながら、AIとプラグインの連携にはリスクも存在する。プラグインは外部からコードをAIに追加するため、セキュリティ上の問題が生じる可能性がある。不適切なプラグインがAIに組み込まれると、ユーザーのデータが危険にさらされるリスクがある。また、プラグインが不適切な動作を行うと、AIのパフォーマンスが低下する可能性もある。これらのリスクを管理するには、プラグインの選択と管理に慎重さが求められる。

以上のように、生成AIとプラグインの連携は新たな可能性をもたらす一方、その利用には慎重な対応と適切なリスク管理が必要である。これらを適切に行いながら、生成AIとプラグインの可能性を最大限に引き出すことが、今後の社会をより良いものにする鍵となるであろう。

柏村 祐


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

柏村 祐

かしわむら たすく

ライフデザイン研究部 主席研究員 テクノロジーリサーチャー
専⾨分野: AI、テクノロジー、DX、イノベーション

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