暮らしの視点(28):「結婚」をめぐる意識の変化を考える

~独身男女の双方で「いずれ結婚するつもり」の人が減少~

北村 安樹子

目次

1.独身男女の双方で微減した生涯の結婚意思

人口問題研究所が昨年9月に公表した調査結果によれば、18~34歳の独身男女における結婚への意向は、前回までの横ばい傾向が変化して、「いずれ結婚するつもり」と答えた人が減少し、「一生結婚するつもりはない」とした人が増加した(図表1)。

この背景には、コロナ禍という特殊な社会状況の影響もあるだろう。ただ、このような変化が一時的なものであったとしても、日本では結婚せずに子どもをもつケースが少ないため、「一生結婚するつもりはない」とする人の増加は、人口減少のペースに影響する可能性がある。

図表1
図表1

2.ミドル期以降の独身男女で高まる健康への関心

今回の調査では、子どもをもたないライフコースを望む女性の微増傾向や、独身・既婚男女が希望する平均子ども数の減少も確認された(注1)。このような現状は、配偶者や子どもをもたないライフコースを歩む人が増える可能性を示している。

当研究所がコロナ禍以前の2019年に行ったアンケート調査で「シングル生活を続ける中、日常生活で気を付けていること」をたずねた結果をみると、「健康の維持・管理や健康づくり」を挙げる独身男女はミドル期以上の人に多く、60代女性では7割を上回っている(図表2)。「健康の維持・管理や健康づくり」は、配偶者や子どもの有無にかかわらず気を付けるべきことであるが、独身女性の場合、老後の生活資金や高齢期の過ごし方を考えていくなかで、これまではミドル期以降になってから関心を強める人が多かったのだろう。

一方、独身男性でも「健康の維持・管理や健康づくり」を挙げる人はミドル期以上で多く、60代では6割近くに及ぶ。独身男性にも年齢とともに自身の健康に関心を強める人が多いといえる。今後は、男女にかかわらず、自身の健康に関心をもつ独身者はさらに増えるだろう。

図表2
図表2

3.健康や人とつながりへの関心が高まった

ここ数年のコロナ禍は、配偶者や子どもの有無にかかわらず、健康管理・健康づくりや、趣味・ライフワークを通じた人とのつながりに対する人々の関心を強め、経済面の生活設計と並行して、それらを主体的に行うことの重要性を気づかせた面があったと考えられる。

その意味で、家計の現状や年齢に伴う心身の変化をふまえながら、ミドル期や高齢期をどのように過ごしたいのか考える機会をもった若者、自身の夢や目標に向けて、仕事・働き方やライフスタイルを見直して、健康面やスキルアップ、経済面の備え、人とのつながりなど新たな取り組みを始めた若者も多いのではないだろうか。

「一生結婚するつもりはない」とする若者も含め、独身の男女が経済面の生活設計と並行して健康や人とのつながりを大切にしたライフデザインを意識することには、ミドル期以降の多様な生き方を考えていくことにつながる面があるといえる。

【注釈】

  1. 理想のライフコースに関し「非婚就業コース」(結婚せず、仕事を続ける)や「DINKsコース」(Double Income No Kidsの略で、共働きで子どもを意図的に持たない夫婦のこと)を理想とする人が増加した。また、結婚意思のある18~34歳の独身男女が希望する平均子ども数、および夫婦の平均理想子ども数とも、減少傾向が確認された。

【参考文献】

  1. 第一生命経済研究所「人生100年時代の「幸せ戦略」」東洋経済新報社、2019年11月

  2. 第一生命経済研究所「「幸せ」視点のライフデザイン」東洋経済新報社、2021年10月

北村 安樹子


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北村 安樹子

きたむら あきこ

ライフデザイン研究部 副主任研究員
専⾨分野: 家族、ライフコース

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