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【1分解説】OECD多国籍企業行動指針とは?

田村 洸樹

  音声解説

多国籍企業行動指針とは、多国籍企業に期待される「責任ある企業行動(Responsible Business Conduct)」を示した、国際的なガイドラインです。多国籍企業が経済発展と社会繁栄に果たす役割の重要性に鑑み、OECD(経済協力開発機構)によって1976年に策定されました。

指針には、3つの大きな特徴があります。1つ目は、法的拘束力を持たず柔軟性が高い点。2つ目は、行動指針の普及・遵守を促進する各国連絡窓口(National Contact Point)が設置されており実効性が高い点。3つ目は、企業活動を取り巻く幅広い分野をカバーしており包括性が高い点です。このような特徴から、広くステークホルダーに受け入れられ、各国の法規制や企業ガバナンスの基礎となるグローバル・スタンダードとして普及したと考えられます。

指針は、国際経済や企業を取り巻く環境の変化に合わせ、これまでに5回改訂が行われてきました。直近の2023年6月の改訂では、科学技術分野や環境分野における企業のデュー・ディリジェンスに関する記載が強化されました。近年は、気候変動などのグローバル課題に対して、多国籍企業の責任を求める声が高まっています。改訂を重ねることで、新たな課題を包括的にカバーしながら、柔軟性と実効性のバランスを保ち続けることができるのかが注目されます。

この解説は2023年2月に公表した後、2024年2月時点の情報に基づき改訂したものです。

田村 洸樹


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