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【1分解説】領海・領空とは?

石附 賢実

  音声解説

領海とは基線、つまり干潮時の海岸線から12海里、22.224kmを超えない範囲で設定できる、沿岸国の主権が及ぶ海域です。領空とは領土及び領海の上空で、当該国の主権が及ぶ空域です。

領海では航行の自由の重要性に鑑みて国連海洋法条約によって無害通航権が認められている一方で、領空は「完全かつ排他的な主権」、つまり無害通航権が認められないことが慣習国際法として定着し、また国際民間航空条約(シカゴ条約)にもその旨が規定されています。

米国は、過剰な海洋権益の主張がみられる海域で「航行の自由作戦」を実施しています。国際社会は中国の南シナ海における「九段線」を認めていませんし、仮に領海であっても国際法上無害通航権は認められており、中国の求める通航の事前通告や許可は既存の国際秩序に対する挑戦といえます。

2023年2月には中国の気球が米国領空を侵犯しましたが、無害通航権は当然に認められません。一方で、1983年には大韓航空機がソ連領空を侵犯して撃墜され、以降民間機への武器使用はシカゴ条約で禁止されました。米国が主権の及ぶ領海上空で気球を撃墜したこと、中国が民間の気球と主張し撃墜に対して抗議したことの背景には、こうした国際法上の考え方があります。

この解説は2023年2月時点の情報に基づいたものです。

石附 賢実


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