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会話型検索エンジンの衝撃

~生産性向上につながる検索エンジンの可能性~

柏村 祐

目次

1.情報収集に欠かせない検索エンジン

生活や仕事に関するさまざまな調べものに、今やインターネット検索エンジンは欠かせなくなっている。グーグルクロームやヤフーに代表される検索エンジンは、インターネット利用者が望む情報を短時間に、簡単に提供する。利用者は、検索エンジンを通じて、瞬時に世界中の膨大な情報にアクセスできる。

検索したい内容を単語または文章として検索エンジンに入力すると、関連するリンク先が複数表示されるため、リンク先に記載される情報を1つ1つ確認しながら情報収集を行う。特に、ビジネスの場においては、検索エンジンによって収集した情報に基づいて、文章をまとめることが求められる機会があるだろう。

そのような中、膨大な情報を整理して、わかりやすい文章を自動生成してくれる検索エンジン(以下、「会話型検索エンジン」と呼ぶ)が登場している。本稿では、会話型検索エンジンについて概観し、その可能性について解説する。

2.会話型検索エンジンとは

現在多くの人が利用している検索エンジンでは、検索した結果のリンク先を1つ1つ確認していく必要がある。一方、AIの進化により登場した会話型検索エンジンは、情報発信元を1つ1つ確認するというプロセスを省力化したうえで、誰もが理解できる水準のわかりやすい文章を検索結果として生成してくれる。

会話型検索エンジンの機能は、検索内容を入力すると、「情報発信元を明示する形でAIが文章を生成してくれる機能」と、「検索内容に関連する追加質問を自動生成してくれる機能」に分類される。

まず、会話型検索エンジンにおける機能の1つである「情報発信元を明示する形でAIが文章を生成してくれる機能」を確認してみよう。会話型検索エンジンは、検索したいことを入力するだけで情報発信元を明示する形で文章を瞬時に生成してくれる。たとえば、会話型検索エンジンに「アンコンシャスバイアスとは何か」と入力すると、検索結果として「アンコンシャスバイアスとは、潜在意識に存在する学習された仮定、信念、態度のことである[1][2][3][4]。ある物事、人、集団に対して、他のものと比較して賛成または反対する偏見や根拠のない判断の一形態である[4]。誰もがこのような偏見をもっており、意識外で形成される[5][1]」(出所:perplexity.ai検索結果より筆者和訳)と文章が生成される(図表1)。生成された文章に記載される[1] [2] [3] [4] [5]は、文章生成に利用される情報発信元がどこなのかを表しており、情報を確認したい場合、該当リンクをクリックすればよい(図表1黄枠)。

図表1
図表1

また、図表1赤枠の詳細を見る機能を利用すれば、「アンコンシャスバイアスとは何か」という質問に対する詳細結果を生成してくれる。詳細結果の内容は、「アンコンシャスバイアスとは、潜在意識に存在する学習された仮定、信念、態度のことである[2][3][4]。ある物、人、集団に対して、別のものと比較して賛成または反対する偏見や根拠のない判断の一形態である[4]。アンコンシャスバイアスとは、個人が自分の意識外で形成する、特定の集団に関する社会的な固定観念のことである[5]。アンコンシャスバイアスの例としては、ジェンダーバイアス、人種的偏り、エイジズムなどがある[1]。アンコンシャスバイアスは、ダイバーシティ&インクルージョンに関するトレーニングや教育を通じて対処することができる [5]」(出所:perplexity.ai検索結果より筆者和訳)と文章をより詳しく生成してくれる(図表2)。

図表2
図表2

次に、「検索内容に関連する追加質問を自動生成してくれる機能」について確認する。「アンコンシャスバイアスとは何か」という質問に対して、会話型検索エンジンは、人が次に知りたくなるような関連質問として、「アンコンシャスバイアスの例」、「職場でのアンコンシャスバイアス」、「アンコンシャスバイアスを減らす方法」を自動生成する。「アンコンシャスバイアスの例」の内容を確認したところ、以下のように情報発信元付きでわかりやすい文章が生成された(図表3赤枠)。

「アンコンシャスバイアスとは、暗黙的偏見の一種で、人が自分の偏見に気づかずに意思決定や意見形成をしてしまうことである。職場におけるアンコンシャスバイアスの例としては、親和性バイアス、確証バイアス、ハロー効果、適合性バイアス、属性バイアス、ジェンダーバイアス、美貌バイアス、エイジズム、体重バイアスがある[1][2][3][4][5]。

たとえば,親和性バイアスとは,人種や性別,経歴などが自分と似ている人を好むことである[2]。確証バイアスとは、人々が自分の既存の信念を確認する情報を探し出し、それに反する証拠を無視することである[3]。ハロー効果とは、人々が、彼らが持っている1つの肯定的な特徴に基づいて、誰かについて仮定することである[3]。適合性バイアスとは、人々が大多数の意見や行動に順応することである[2]。帰属バイアスとは、人々が成功や失敗を運や状況などの外的要因ではなく、能力などの内的要因に帰することである[4]。ジェンダーバイアスとは、雇用や昇進の決定において、ある性別が他の性別よりも優遇されることである[1]。美貌バイアスとは、仕事の機会や昇進の際に、魅力的な人が魅力的でない人よりも優遇されることである[5]。エイジズムとは、高齢の労働者が年齢のために差別されることである[5]。体重偏重主義とは、太り過ぎの人が体重のために否定的に判断されることである[2]」(出所:perplexity.ai検索結果より筆者和訳)。

さらに「アンコンシャスバイアスの例」に関連する質問として、「職場でのアンコンシャスバイアスの偏見」、「アンコンシャスバイアスの定義」、「アンコンシャス バイアス トレーニング」が追加質問として自動生成された(図表3青枠)。

図表3
図表3

3.会話型検索エンジンの可能性

以上のように、会話型検索エンジンには、「情報発信元を明示する形でAIが文章を生成してくれる機能」と「検索内容に関連する追加質問を自動生成してくれる機能」がある。

一方、現在多くの人が利用している検索エンジンは、検索したい内容を入力し、それに関連するリンク先が複数表示される中から1つ1つ情報を確認し、どのような組織や個人がその情報を発信しているかを確認しながら情報収集するプロセスが一般的となっている。AIの進化に伴い誕生した会話型検索エンジンは、1つ1つ検索エンジンが表示する情報を確認するプロセスを省力化するとともに、わかりやすい文章を生成してくれる。検索したいことを単語または文章で入力すれば、情報発信元となる情報発信源を可視化した形で文章化してくれる会話型検索エンジンは、たとえばビジネスで関連情報を調査する場合などの効率化につながるだろう。ただし、会話型検索エンジンが情報発信元の内容の正否を保証するものではない点には留意する必要がある。

また、「検索内容に関連する追加質問を自動生成してくれる機能」は、検索した内容に関連する周辺質問を自動生成してくれるため、関連知識を深めるのに役立つ。会話型検索エンジンの活用は、現状分析を行うための作業時間を効率化し、そこから捻出された余力を付加価値の高い仕事に費やすことにつながるであろう。

日進月歩で高度化する検索エンジンの世界に登場した会話型検索エンジンは、従来では考えられなかった情報収集プロセスの仕組みを提供している。働き方変革、生産性向上につながる仕組みとして、今後さらに幅広い活用が見込まれるところである。

柏村 祐


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

柏村 祐

かしわむら たすく

ライフデザイン研究部 主席研究員 テクノロジーリサーチャー
専⾨分野: AI、テクノロジー、DX、イノベーション

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