コロナ禍の感染対策と人に会うことへの意識

~9月も続いていた自粛意識の今後~

北村 安樹子

目次

1.コロナ禍当初に比べ増えた情報と対策

新型コロナウイルスが流行してからの3年近くの月日を振り返ると、当初は未知だったウイルスの特性や感染の動向、感染予防などにかかわる情報は格段に増えた。感染に対する人々の認識も以前に比べると冷静なものとなり、感染予防を意識した行動も日常的な習慣といえるほど広く定着している。また、ウィズコロナの生活が長期化・常態化するなかで、マスクの着用や手洗い・消毒といった感染対策に加え、ワクチン接種など新たな対策も行われるようになった。これらの状況は、人に会うことへの抵抗感にどう影響しているのだろうか。また、全国一律での行動制限が行われなくなったなかで、友人・知人と会うこと自体を控える感染予防はどの程度続いているのだろうか。

当研究所では、2022年7月頃から急増した感染者数が過去最高の水準に達し、その後減少に転じたなかで迎えた9月初めに「第5回新型コロナ生活調査(新型コロナウイルスによる生活と意識の変化に関する調査)」を行った(注1)。本稿ではこの調査結果をもとに、友人・知人と会うことに対する人々の自粛意識について考えてみたい。

2.情報・感染対策の増加と人に会うことへの意識の変化

図表1は、「新型コロナウイルスに関する情報や対策(ワクチン、検査など)が増えたことで、人に会うことへの抵抗感が弱まった」かについてたずねた結果である。これをみると、「あてはまる」とした人は6.7%で、「どちらかといえばあてはまる」とした32.5%の人を合わせても約4割にとどまっている。

コロナ禍以降、ウイルスに関する情報は増え、ワクチン接種などの新たな対策も進められてきた。しかしながら、この調査を行った時点では、オミクロン株に対応した新たなワクチンに関する情報がまだ少なかったことや、副反応を伴うこともある追加接種に不安を感じる人もいたことなどが、人に会うことへの抵抗感が弱まらなかったことの一因になっていたと思われる。

図表1
図表1

3.感染予防を意識した友人・知人との対面行動の自粛意識

一方、今回の調査では、友人・知人と会うことへの自粛意識(自分や他の人への感染を防ぐための行動として、友人・知人と会うのを控えているか)もたずねている。その結果、回答者の7割弱が依然控えている(「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」の合計割合、以下同)と答えた(図表2)。自粛意識をたずねたため、実際に会ったのかは確認できないが、調査時点では、意識の変化という点でコロナ禍以前と同じ水準に戻っていないと感じている人が多かった。

では、情報や対策の増加で人に会うことへの抵抗感が弱まったかどうかは、9月初めの時点で友人・知人と会うことへの自粛意識に影響していたのだろうか。結論からいえば、抵抗感が弱まったかどうかにかかわらず、7割近くの人が友人・知人と会うのを控えていると答えた(図表2)。全国一律の新たな行動制限は行われていなかった状況のなか、情報や対策によって人に会う抵抗感が弱まったか否かにかかわらず、依然として感染防止のために友人・知人と会うことを控える人が多数となっている。

図表2
図表2

4.コロナ対策の新段階に関するわかりやすい情報発信の重要性

調査実施後、第7波の感染者数に下げ止まりの傾向が続いたことを受け、以降は従来からの基本的な感染対策を継続して感染拡大を防ぎながら、保健医療体制の強化・重点化をはかり、新たな行動制限は行わない形で社会・経済活動を正常化することが目指されている。

保健医療体制に関しては、高齢者など重症化リスクの高い人への対応を重視し、受診・入院などにより治療や健康観察が確実に行われるための環境の整備が進められている。一方、若者など症状が軽く自宅等での療養を希望する人については、検査キットの活用や陽性者の自宅療養期間の短縮などにより、療養や日常生活が続けやすくなる。また、オミクロン株に対応した新たなワクチンの接種開始に伴い、期待される効果や、想定される副反応に関する情報も増えている。

ただ、今回の調査を行った時点では、これらの点に関する具体的な情報や理解がまだ拡がっておらず、自身の対応や行動を考える際の見通しを持ちにくかったことが、調査結果に影響した可能性もある。これらの新たな方向性に対する理解が拡がれば、重症化するリスクが低い人を中心に自分や他者への感染を懸念して友人・知人と会うこと自体を控えようとする意識は和らぐのではないか。他方、感染が重症化につながりやすい人などにとっては、感染動向や感染回避への関心が強まる側面もあるだろう。

【注釈】

  1. 第5回調査は、20~69歳の男女を対象にインターネット調査により実施。有効回収数は3,000名。

【参考資料】

  1. 第一生命経済研究所「「第5回新型コロナ生活調査」よりコロナ禍の影響を総括【速報】~健康・お金・つながりに関する意識・行動の変化~」2022年9月26日。

北村 安樹子


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北村 安樹子

きたむら あきこ

ライフデザイン研究部 副主任研究員
専⾨分野: 家族、ライフコース

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