デジタル国家ウクライナ デジタル国家ウクライナ

DXの視点『プログラミング教育にAIは活用できるのか』

柏村 祐

2020年度より小学校でのプログラミング教育が必修化されたが、プログラミングのスキルを身に付けるだけでなく、小学校段階における論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成も目的とされている。このプログラミング教育に対して、近年のAI技術の進歩に伴い、新たな形が求められている。生成AIは、近年進歩しているAI技術の中でも特に教育分野において活用の幅が広がる可能性がある。生成AIは、データを学習し、新たな情報やコンテンツを生成するAI技術である。テキスト、画像、音声等のさまざまな形式の生成が可能であり、生成物は人間が作成したものと見分けがつかないほど高品質な場合もある。

生成AIがもつプログラミング能力は、プログラム生成・プログラム解説生成・プログラム問題生成に分類される。ここからは、これらの生成能力について具体事例を確認しながらその内容について確認していく。

まず、プログラム生成とは、自然言語で記述された文章からプログラムのコードを生成することを指す。これにより、学習者は実際のプログラム例を参考にしながら、理解を深められる。実際、生成AIに対して「Pythonでジャンケンゲームを作成してください」と要件を出してみると、生成AIは、一瞬にしてPythonで動作するジャンケンゲームのプログラムを生成する。Pythonは、オープンソースの高水準プログラミング言語であり、広く使用されている。次に、プログラム解説生成に関する生成AIの対応について確認してみよう。生成AIは、コードの解説文を自動生成することができる。これにより、学習者はコードの機能や目的を理解しやすくなり、効率的な学習が可能になる。たとえば、世界で最も有名なプログラムとして、プログラムを実行すると画面に「Hello, World!」と出力されるプログラムがある。Pythonでこのプログラムを書くと「print("Hello, World!")」という記述が必要となるが、この内容を生成AIに読み込ませ「何を意味しているか解説してください」と質問してみた。その結果、生成AIは、このプログラムの意味について、プログラム初心者が理解できるレベルの内容を順序立ててわかりやすく解説してくれる。最後に、プログラム問題生成に関する生成AIの対応について確認してみよう。生成AIは、学習者の状況に応じて適切な指導を提供することができる。これにより、個別指導の効率化が図られる。実際に生成AIに対して「中学生向けに習熟度に応じてプログラミング問題を2つ作成してください」と文章を入力してみた。その結果、生成AIは、瞬時に難易度の異なる2つのプログラミング問題を生成した。

以上みてきたように、生成AIは、プログラミング教育に関連するプログラム生成・プログラム解説生成・プログラム問題生成について、自然言語で記述された文章さえ入力すれば、文章の内容に応じた的確な回答を提示してくれる。この事実は既に生成AIが、プログラミング教育の中核機能を代替できることを示唆している。このような生成AIの進化を踏まえれば、現在教師が生徒にプログラミングを教えるという仕組みに加えて、プログラミング教育の現場に生成AIを導入し、活用できるのではないだろうか。

柏村 祐


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

柏村 祐

かしわむら たすく

ライフデザイン研究部 主席研究員 テクノロジーリサーチャー
専⾨分野: AI、テクノロジー、DX、イノベーション

執筆者の最新レポート

関連レポート

関連テーマ