ライフデザイン白書2024 ライフデザイン白書2024

よく分かる!経済のツボ『テレワークは「職場のウェルビーイング実現」の鍵となるか』

髙宮 咲妃

目次

テレワークで従業員の生活満足度・生産性向上

テレワークは2020年以降、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、出勤抑制の手段として広く利用されるようになりました。しかしテレワークの実施率は1回目の緊急事態宣言(2020年4月7日~5月25日)時に約56%まで上がったものの2022年以降は30%前後で推移しており、テレワークの実施が感染拡大防止のための一時的な施策に留まった企業も多くあります(資料1)。

しかし、テレワークができる状態にある人のほうが生活満足度等の各種満足度で高いという結果がでている(資料2)ように、テレワークは企業に勤める従業員にとってウィズコロナに対応した働き方であると同時に、自身のウェルビーイング向上に資する働き方であるといえます。さらにコロナ前後で生産性が増加した人が減少した人を大きく上回っています(資料3)。テレワーク等の柔軟な働き方によるものと考えられ、生産性向上にも寄与している可能性が示唆されます。

業務の性格上テレワークを実施することが難しい業種や職種もありますが、業務遂行方法の本質的な見直しによってテレワークの実施が可能な場合もあります。企業は従業員のウェルビーイング、生産性向上につながる働き方としてテレワークの導入および更なる定着を図ることが重要です。

マネジメントの工夫でさらなる効果

テレワークは非対面での働き方であるため、上司が部下の状況を確認・支援することが難しく、部下が主体的に判断し、業務遂行すること(部下の裁量権拡大)が求められます。「働きがい」が高い企業では、「業務遂行に伴う裁量権の拡大」に取り組んでいる例が多くある(厚生労働省「令和元年版労働経済の分析」)等、エンゲージメント向上も期待できます。しかしながら、部下の行動・判断と組織が目指す方向に齟齬が生じるリスクもあるため、テレワークでの業務遂行時は、業務の裁量を持たせる他、従業員の業務範囲や期限を明確に伝える、適宜相談や報告を促す等のマネジメントの工夫が重要となります。

資料1 企業のテレワーク実施率の推移
資料1 企業のテレワーク実施率の推移

資料2 テレワーク可否別各種満足度
資料2 テレワーク可否別各種満足度

資料3 コロナ前後(2019.12時点と2023.3時点)の生産性の変化
資料3 コロナ前後(2019.12時点と2023.3時点)の生産性の変化

髙宮 咲妃


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