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内外経済ウォッチ『日本~年度後半以降の経済・景気のポイント~』(2023年11月号)

永濱 利廣

目次

23年度後半以降の海外景気

2023年度前半にかけての世界経済は、これまでの金融引き締めによる下押し圧力の一方で、ユーロ圏以外の主要先進国はいずれも総合PMIが50を上回って推移するなど、総じてみれば底堅い動きがみられている。

背景には、雇用が安定する中での物価高対策や、特に日中において経済活動の再開に伴うサービス消費、GX・DX・レジリエンス強化面を中心とした設備投資の増加がある。

特に米国では、堅調な雇用情勢を受けて労働需給の引き締まりが続き、人手不足により高い賃金上昇が継続したことで個人消費がけん引役となってきた。しかし、これまでの急速な金融引き締めを受けて住宅ローン金利は急上昇しており、今後もこれまでの利上げの影響が見込まれる中、住宅市場や設備投資の悪化が主導することで、年度後半の米国経済は明確に減速局面に入ろう。ただ、労働市場の勢いが下支えすることで、景気後退にまで至る可能性は低いと想定される。

一方、足元で悪化が目立つユーロ圏の景気だが、雇用の改善が続く中で最悪期は脱しつつあると見る。今後はインフレ鈍化に伴う消費の下押し緩和、エネルギーの供給制約や価格高騰の緩和に伴う生産活動の回復により、来年にかけて幾分景気は持ち直すと見る。

こうした中、デフレリスクが高まる中で政府の対応が鈍い中国経済が最大の懸念材料となろう。昨年末のゼロコロナ解除で一時的に持ち直しの動きがあったものの、不動産市況の悪化や地政学的緊張の高まりによる悪影響が当初の予想以上に重しになっている。特にGDPの3割相当を占めるとされる不動産開発部門は低調が続いており、企業の債務問題が長期化する中で、不動産開発投資が足を引っ張っている。これを受けて中国人民銀行も金融緩和に着手しているが、地政学的緊張の高まりによる中国からの資本流出につながるリスクもジレンマとなっている。こうした中で、特にコロナ禍以降に少子化に拍車がかかっており、中国の経済成長率は長期的にも伸びが抑制される可能性が高いといえよう。

23年度後半以降の国内景気

このように、すでにPMIで減速の可能性を示している世界経済は、来年にかけてリセッションは避けられるものの、米中中心に減速が不可避となろう。

こうした中で、肝心の日本の景気は相対的に底堅い回復が予想される。背景には、コロナからのリオープンを原動力としたサービス消費の回復、政府の支援策の恩恵も受けたGX・DX・レジリエンス強化向けの設備投資、インバウンド消費の更なる拡大がある。

なお、当面のリスクは財消費の抑制要因となっているコストプッシュインフレの影響に加え、世界経済の減速による輸出や生産・設備投資への悪影響だが、世界的には依然として日本の主力産業である自動車のペントアップディマンドが旺盛なため、景気の腰折れは避けられると見る。

以上より、今年度後半以降の国内景気は、海外経済の悪化を受けて減速を余儀なくされるものの、底堅い国内のサービス消費や設備投資、インバウンド消費や自動車関連輸出が下支えとなることで、緩やかな回復を続けると予想する。

永濱 利廣


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

永濱 利廣

ながはま としひろ

経済調査部 首席エコノミスト
担当: 内外経済市場長期予測、経済統計、マクロ経済分析

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