1分でわかるトレンド解説 1分でわかるトレンド解説

よく分かる!経済のツボ『「値上げの夏」を乗り切れば電気代負担は軽くなるか』

牧之内 芽衣

目次

地球沸騰化時代の到来

2023年7月の世界の平均気温が過去最高を更新する見通しとなったことを受け、国連のグテレス事務総長は同月末の記者会見で「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化時代が到来した」と警鐘を鳴らしました。実際、その後の気象庁の発表によると、2023年7月は1891年の統計開始以降最も平均気温が高く、上記の発言がより現実味を帯びる結果となりました(資料1)。

資料1
資料1

補助あり・エネルギー消費減でも電気代は上昇

エアコンなしの生活が困難な酷暑は電気代が家計に影を落とします。2022年の電気代(月平均)は2005年と比べて約1.4倍に達しました(資料2)。政府は円安やロシアによるウクライナ侵略によるエネルギー価格上昇への対策として、2022年1月からガソリン代、2023年1月から電気・ガス代の補助(激変緩和措置)を行っています。資源エネルギー庁によると、この措置により標準的な家庭の電気代が月2800円軽減されています。また、私たちのエネルギー消費量は、家電の省エネ化などを背景に次第に減少しています(資料3)。それでもなお電気代が上昇しているのが現状です。

資料2
資料2

資料3
資料3

間近に迫る冬場のエネルギー貧困

日本は発電量の約4分の3を火力で賄っているため、エネルギー価格高騰の影響を強く受けます。原油価格は1バレルあたり130ドル超を記録した2022年3月と比べ、2023年8月時点で80ドル前後に落ち着いています。しかし、中東の国々を中心とするOPECプラスは、産油一辺倒から脱するための資金調達や国家収入の安定など、様々な思惑から協調減産の手を緩めていません。

当初2023年9月末が目途とされていた電気・ガス代の補助は延長が発表されましたが、電気代がエネルギー価格によって不安定に上下する構造は変わっていません。夏を乗り越えても、暖房の需要が生じる冬にふたたび空調や照明を十分に利用できない「エネルギー貧困」が社会問題化しないか注視が必要です。

牧之内 芽衣


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。