ライフデザイン白書2024 ライフデザイン白書2024

注目のキーワード『サステナビリティ開示』

鄭 美沙

「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正により、2023年3月期の有価証券報告書から、サステナビリティに関する企業の取組の記載が拡充されます。この取組には、多様性や人的資本、その他サステナビリティ全般に関することが含まれ、各企業は重要性に応じながら開示を進めることになります。

図表1
図表1

主な改正内容の1つは、「サステナビリティに関する考え方及び取組」の記載欄の新設です。人的資本に関しては、本欄において、人材の多様性の確保を含む人材育成方針や社内環境整備方針、指標等を記載することが必須になります。また、女性活躍推進法等に基づき「男性の育児休業取得率」や「男女間賃金格差」等を公表する企業は、多様性関連として、これらを「従業員の状況」欄に記載します。例えば、男性育児休業取得率等の取得状況は、有価証券報告書の提出有無にかかわらず、2023年4月から従業員が1000人を超える企業はインターネット等での開示が必要です。

このように、今回開示が必須化した項目には、既に有価証券報告書以外での開示が制度化されているものや、統合報告書等で企業が任意で開示してきたものも多くあります。今後も、法令によって開示が要請される「制度開示」の範囲や対象企業の拡大が考えられます。なにより、顧客や人材を引きつけるためには、義務化にかかわらず積極的な情報開示が有効です。

特に、リスキリング等「人への投資」を政府や企業が進める中では、人的資本の開示が一層重要になると想定されます。人的資本の活用・可視化に向け、人事データの蓄積や管理・分析を行うHRテックの活用も広がっています。ただし、開示には、経営戦略とそれに一致する人材戦略の存在が前提とされています。まずは、各企業が持続可能性を高めるビジネスモデルと、その実現に不可欠な人材像を改めて整理することが、開示充実の第一歩です。

鄭 美沙


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。