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エコノミスト大胆予測、23年度はこうなる!『円安・物価高とこれからの日本経済』(2023年4月号)

永濱 利廣

目次

2023年の物価は伸び鈍化

2023年度を展望すれば、消費者物価の伸び率は鈍化の可能性が高いだろう。というのも、足元ではエネルギー価格の元となる原油価格が130㌦/バレル超えから70~80㌦/バレル台まで下がっている。また、総合経済対策による電気・ガス代の価格抑制策の影響が2月分から反映されるためである。

ただ、電力7社が価格上限引き上げを政府に申請していることから、4月分もしくは6月分からは多くの地域で電気料金の大幅値上げが実施される可能性が高いことには注意が必要だ。

一方、生鮮除く食料品の価格については、既に穀物価格自体はピークアウトしているものの、昨秋まで円安傾向が続いてきたことから、今後もしばらく価格転嫁が続く可能性が高いだろう。なお、当初は10月の政府小麦売り渡し価格がロシアのウクライナ侵攻の影響を受けて大幅に引き上がることが懸念されていたが、岸田政権が価格を据え置くことを決断した。

ただ、これはあくまで値上げの先送りである。というのも、今年4月の政府小麦売り渡し価格は通常の過去半年間の平均輸入価格ではなく、過去1年までさかのぼった平均価格で決まる。このため、4月の政府小麦売り渡し価格にはウクライナ危機直後の小麦価格の上昇分が反映されることには注意が必要である。

このため、これまでの商品市況高や円安の進展を理由に食料品や耐久財等の値上げは2023年度以降もしばらく続きそうだ。となると、為替の動向も2023年度の物価を大きく左右しよう。

為替はドル安進行の可能性

しかし、これまでの物価上昇の主因となってきたドル高も2023年度以降はもう一段の円高に向かいそうである。というのも、既に米国経済はこれまでの金利上昇などの影響を受けて明確に減速している。そして米国では逆イールド、すなわち2年債利回りが10年債利回りを上回るとその後必ず景気後退局面するという経験則があるが、すでに今年の夏時点でこの状況にあることからすれば、2023年度の米国経済はさらに減速の度合いが強まることが予想される。

また、そもそもドル高のきっかけが、米国のインフレ率上昇に伴うFRBの利上げ観測の強まりである。しかし、米国のインフレ率上昇の主因の一つとなった一次産品価格は世界経済の減速などを見越してすでにピークアウトしている。となれば、今後は米国のインフレ率も低下傾向がより明確になるだろう。事実、FRBが+2%のインフレ目標とするPCEコアデフレーターを直近前月比が今後も続くと仮定してインフレ率を延長すると、早ければ今年の秋以降にもインフレ率は+2%台に近づくことになる。

となれば、これまで立て続けに急速な利上げを実施しているFRBも、今年前半中に利上げを打ち止め、景気悪化の度合い次第では年内に利下げに転じる可能性すらあるだろう。

一方、円安の要因となっていた日本の経常黒字の縮小も、輸入一次産品価格が円安の進行以上に下落していることからすれば、日本の貿易赤字も縮小に向かおう。さらに、サービス収支の赤字も今後のインバウンド消費の増加などにより縮小に向かう等から、経常収支の黒字が拡大に転じることも今後の円高要因となろう。

また、日銀人事も円高圧力となる可能性がある。というのも、3~4月にかけて日銀副総裁、総裁の任期が満了となる。そして、最も重要な日銀総裁の後任人事は、現在のイールドカーブコントロール政策における問題点を指摘してきた経済学者で元日銀審議委員の植田和男氏起用されることになった。となると、リフレ的な政策志向の強い黒田日銀よりもタカ派にシフトする可能性があることからすれば、これも円高圧力となる可能性があろう。

永濱 利廣


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

永濱 利廣

ながはま としひろ

経済調査部 首席エコノミスト
担当: 内外経済市場長期予測、経済統計、マクロ経済分析

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