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SDGsの羅針盤『DE&Iとは?~公平性(Equity)実現が人材戦略のカギ~』

白石 香織

目次

DE&Iとは企業の新しい戦略課題

DE&Iとは「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン」の略で、「多様性(Diversity)」と「包括性(Inclusion)」を推進する「D&I」に、「公平性(Equity)」が加わった企業の新しい戦略課題である。ジェンダーや人種、年齢、障がいの有無等、個々の異なる状況や特性に応じて、企業が適切なサポートを行い、能力を最大限発揮できる環境を整備することを指す。

背景には、特に米国などでの非白人や女性、LGBTといったマイノリティに対して根付く社会的な不平等の問題がある。多様な人材の個々の状況や特性を考慮にいれず、機会を平等に与えるだけでは、社会的な不平等や格差は解決されづらいことから、多くの企業が「公平性(Equity)」の確保に注目している。

公平性(Equity)とは何か?

では、「公平性(Equity)」とはどのような概念だろうか?右上のイラスト(資料)を参考に、「平等(Equality)」と比較するとわかりやすい。

イラスト左側(Equality)では、野球の試合を見るために、幼児から子ども、大人までに全員に同じ高さの台が用意されている。つまり、「平等(Equality)」とは、個々の状況や特性を加味せずに、すべての人に同じリソースが与えられている状態を指す。結果として、一番右にいる幼児は背が届かず野球の観戦ができていない。

一方、イラスト右側(Equity)では、幼児や子どもの背の高さに合わせて、野球観戦に必要となる高さの台が用意されている。つまり、「公平性(Equity)」とは、個々の特性や状況に合わせてリソースを与え、3人の誰もが野球の観戦を実現できている状態を指す。

D&Iでは企業は多様な人材が活躍できる環境を整備してきたが、DE&Iでは一歩踏み込み、多様な人材が直面する格差や不利な状況を、組織の制度や運営等により是正・支援することが求められる。

図表1
図表1

DE&I実現に向けて企業がすべきこと

それでは、DE&I実現に向けて、企業はどのような取組みを行っているのだろうか。海外のある先進企業では、同性パートナーシップ制度を導入し、配偶者に提供される慶弔時の特別休暇および見舞金や介護休暇の取得を同性のパートナーにも付与している。また、仕事から2年以上離れていた人材や元服役者をキャリア復帰させるプログラムを導入する企業もある。

日本でも、DE&Iの取組みとして「公平性」の確保に動き出す企業が出てきている。従来の女性管理職比率目標の設置や育児休業から復帰する従業員への支援プログラム強化に加え、IT業界におけるマイノリティ(女性やLGBT)向けのソフトエンジニア育成およびインターンシップの提供、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)や差別撲滅に向けた研修といった取組みが導入され始めている。

今後、特に海外でビジネスを行う企業にとっては、先のイラストにあるような個々に合わせた「公平性」を実現することで、多様な人材を確保しつつその能力を発揮させられるかが、グローバルな人材戦略を進める上でのカギとなるだろう。

白石 香織


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。